2003年に高血圧ガイドラインJNC7が公表されて以来、一度も改訂されることのなかった米国の公式高血圧ガイドラインが改訂された。13日のセッション“2017 Hypertension Clinical Practice Guidelines”から概要を紹介したい。
1977年にJNC1を公表して以来、米国の高血圧ガイドラインはNHLBI(国立心肺血液研究所)が作成してきた。しかしJNC7の改訂が進む2013年、NHLBIはこの任務をAHAとACCに託した。以来3年間余をかけ作成されたのが、今回公表されたガイドラインである。15のセクションにわたり、106項目の推奨が並ぶ。
この2017年AHA/ACCガイドラインにおける最大の改訂点は、血圧分類の変更である。高血圧の定義は「130/80mmHg以上」に引き下げられた。JNC7では「Prehypertension」の一部だった「130-139/80-89mmHg」が「ステージ1高血圧」となったためである。「130-139/80-89mmHg」では正常血圧(これは変更なし)である「120/80mmHg未満」と比べ、心血管系死亡リスクが50%以上高いことが明らかになったため、「高血圧」に分類された。なお、「120-129/80mmHg未満」には新たに「上昇(Elevated)血圧」という名がついた。
次に治療だが、原則は生活習慣の是正である。その上で140/90mmHg以上であれば、薬剤治療を開始する。また、140/90mmHg未満130/89mmHg以上であっても、10年間の動脈硬化性心血管系(ASCVD)イベントリスクが10%以上あれば、薬剤治療の対象となる。ASCVDリスクの算出には、ACC/AHA作成のリスク計算表を用いる。
降圧目標は、余命の限られている高齢者など一部の例外を除き、一律「130/80mmHg未満」とされた。年齢、frailtyの程度、合併症の有無・種類による細分化はない。
JNC7の前身であるJNC6は、血圧に加え各種リスクの評価を求めた結果、煩雑すぎると実地医家に敬遠された。JNC7が思い切った単純化を図ったのは、その反省に立ってのことである。2017年ガイドラインも結果としては、シンプルな推奨に収まった。米国内だけですでに数種類の高血圧ガイドラインが公表されている中、どれほど普及するか、注目したい。