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(2)輸入感染症からみたワクチンの重要性─狂犬病について [特集:渡航者ワクチンの現状と課題]

No.4789 (2016年02月06日発行) P.27

黒田友顯 (厚生労働省関西空港検疫所検疫課検疫医療専門職)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 狂犬病は現在日本では発症例はないが,世界的に流行している病気の1つである

    イヌだけでなく,ネコ,サル,キツネ,アライグマなどの動物に傷つけられたり,コウモリと接触すると狂犬病ウイルスに曝露される危険性がある

    感染予防,発症阻止策として狂犬病ワクチンがある

    短期旅行でも渡航先で安全に過ごすためには渡航先の情報を調べることが重要である

    1. 狂犬病について

    世界的に流行している輸入感染症の中にワクチンで防げる感染症がある。経口感染症としてA型肝炎,腸チフス,コレラ,節足動物媒介感染症として日本脳炎やダニ媒介性脳炎,動物由来感染症として狂犬病などがある。中でも狂犬病は発症すると致死率はほぼ100%と高い。渡航先でも動物と接触する機会は少なくなく,その際に咬傷を受け狂犬病ウイルスに曝露される可能性もある。狂犬病はワクチンを接種することにより感染予防,発病阻止ができる病気である。本稿では,輸入感染症からみたワクチンの重要性の1つとして狂犬病について取り上げ,関西空港検疫所にあった相談例の中から動物から咬傷を受けた例について分析し考察したので解説する。
    狂犬病は狂犬病ウイルスに感染した動物に咬まれることにより感染する。狂犬病ウイルスの媒介動物は,病名の由来するイヌ以外にネコやキツネ,米国ではコウモリ,アライグマなどがある(図1)。動物に咬まれ長い潜伏期(1~3カ月,長い場合には1年以上)の後,感冒様症状から始まり,強い不安感,一時的な錯乱,水を見ると首(頸部)の筋肉が痙攣する(恐水症),冷たい風でも同様に痙攣する(恐風症),高熱,麻痺,運動失調,全身痙攣が起こる。その後,呼吸障害などの症状を示し短期間で死に至る。狂犬病はいったん発症すれば効果的な治療法はなく,ほぼ100%死亡するが,動物に咬まれるなど感染した疑いがある場合,その直後からワクチンを連続接種すること(曝露後接種)で発症を抑えることができる。

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