近年,高齢化社会を迎え心不全患者は増加しつつあり,救急搬送数や集中治療ケアを必要とする患者数も心筋梗塞の患者数をはるかに超えている。心不全はその経過中にがん,認知症,腎不全などの併存症が多くなるが,独居,低収入など社会背景に問題がある患者も増えている。このような患者群では単に薬剤を処方するだけでは入院を回避できないことが多く,看護師,薬剤師,リハビリ指導士,栄養士,ケアマネジャーなどの多職種が多面的に介入する必要がある。
近年の話題として心不全患者では低栄養が予後不良因子であり,その評価と介入が急務となっている。このことは,日本心不全学会作成の「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」の中でも強調された。また,終末期においては緩和ケアが必要な症例も出現することから,アドバンス・ケア・プランニングと緩和ケアについての提唱なども同ステートメントで行われた。さらに厚生労働省の指導する緩和ケアもがんだけではなく,心不全も含む方向性が示されるようになった。
このような社会的方向性が進む中,Stage C,Dの心不全患者について,多職種チーム医療で介入可能な点を改めて整理したい。
1 多職種チームの介入により入退院を回避する
兵庫県立尼崎総合医療センター慢性心不全看護認定看護師/神戸女子大学看護学部看護学科 鷲田幸一
2 栄養介入で心不全悪化を予防する
鳥取大学医学部病態情報内科学分野講師 衣笠良治
3 緩和ケアを考える
国立循環器病研究センター心臓血管内科医長 菅野康夫