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(2)バリアを守る新生児期からのスキンケア [特集:小児アトピー性皮膚炎治療update]

No.4793 (2016年03月05日発行) P.28

佐々木りか子 (りかこ皮フ科クリニック院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • アトピー性皮膚炎(AD)はバリア機能異常を主因とするが,その発症は,出生直後から全身皮膚の保湿を開始することにより,予防できる可能性がある

    全身の保湿はすべての小児に必要なスキンケアである

    1. 新生児期から全身保湿を開始するとADの発症は予防しうる

    乳児は新生児の脂漏性変化を遂げた後に,生後2カ月くらいから瘙痒感を伴う乾燥性のアトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)を発症することが多い。そのため,まだ一般的に発症後から保湿を開始させる治療が行われている。新生児の皮脂分泌は母体由来の性ホルモンも関連はしているが,特に男児においては生後,自らテストステロンを活発に分泌するため前額や眉毛部などの脂漏部位における皮脂量は多い1)。しかし,脂漏部位を除く部位では皮脂量は少ないことはあまり知られていない(図1)2)。新生児の角層のバリア機能は,満期産児であっても成熟したものではなく,半透過性であり,陸上で生活を送るための最低限の機能しか備わっていない3)。また,その後1年を通して成長し続けることが報告されている4)
    2010年にSimpsonらは,両親がADという遺伝的に発症リスクの高い新生児に,出生後早期(1〜7日以内)から1日1回以上の全身保湿を行うことにより,30〜50%の発症率を15%に減少させることができたというパイロットスタディを報告した。2014年にはその検証論文が発表され5),わが国からもHorimukaiら6)により,新生児期からの全身保湿はADの発症を予防しうるという無作為抽出比較試験が報告された。
    すなわち,乳児期にADが発症してから保湿を始めるのではなく,生まれたその日から,全身に保湿を開始することが推奨される。

    2. ADのスキンケア

    ADは,角層のバリア機能異常がある疾患である。したがって,①角層に付着した微細な化学的・生物学的物質を可及的速やかに取り去ること,②その後に保湿を行って,バリアを修復しておくこと,という清潔と保湿によるスキンケアは,治療と等しく重要なことである。
    しかし,子どもにスキンケアを実行することは簡単なようで難しい。毎日これを患者・家族に実行してもらうためには,患者およびその家族がその意義をよく理解できるように説明し,具体的でわかりやすい方法を説明指導することが大切である。
    スキンケアとは,清潔・保湿・紫外線防御の3本の柱で成り立ち,皮膚の機能を維持するために重要不可欠な方法である。本来,スキンケアは外用療法とは一線を画する概念で,正常な皮膚をより健康に保つことを目的とし,外用薬を用いずに行うケアを指している。
    しかしながら,皮膚科学的には,いかなる皮膚疾患に対してもスキンケアは成立するものであり,なおかつ疾患の治療の補助として重要な方法である。病的な皮膚に対するスキンケアを,皮膚生理学と病態に基づいた知識をもって行うことにより,疾患を予防し,外用療法の効果を上げ,外用薬の使用量を減らすことができると考える。とりわけ角層のバリア機能異常を病態とするADにおいては,保湿薬の効果に対するエビデンスの報告も増えている。

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