1997年に臓器移植法が成立し,99年にわが国で初めての脳死下臓器提供が実施された。しかし,生前に書面で臓器提供の意思を示しておく必要があるなどの規定が要因となり,実施数は伸び悩んでいた。2009年に臓器移植法が改正され,家族の同意での提供が可能となり,改正前の13年間で86例であった提供数は,改正後の5年間で247例と増加した1)。
脳死を経ない心臓死後の腎臓等の臓器提供と異なり,脳死とされうる状態と判断された場合の臓器提供は大学附属病院,救命救急センターとして認定された施設に限られる。脳死とされうる状態は不安定であり,積極的な管理をしなければ短期間で心臓死に陥るため,脳死判定を含めて緊急対応に準じて進められ,手術室での臓器摘出術に至る。
臓器摘出に際し,呼吸循環を管理する麻酔科医師の協力が求められる(麻酔という言葉は用いない)。手術開始前にメチルプレドニゾロンと筋弛緩薬の投与を行う。手術開始から大動脈遮断まで約40分であり,この間に臓器血流を維持するために血管収縮薬はなるべく使用しない。平均として5%アルブミン製剤250mL 5本とRBC 10単位が投与される。内頸静脈からの中心静脈カテーテルは,上大静脈の処理の際に抜去しなければならないため,最低2本以上の太い末梢ラインが必要である。大動脈を遮断したあとは循環の管理は終了するが,肺の摘出がある場合は気管遮断まで人工呼吸管理を継続する。
【文献】
1) 日本臓器移植ネットワーク.
[https://www.jotnw.or.jp/datafile/index.html]
【解説】
長谷洋和 帝京大学麻酔科講師