【質問者】
丹羽利充 修文大学学長
腸内細菌叢の変化は全身の様々な疾患の病態に関与することが近年注目されており,CKDとの関連も明らかになりつつあります。
まず腸内細菌叢はCKD時の尿毒素の蓄積に関与します。尿毒素は腎機能の低下に伴って体内に蓄積し生体に有害な作用を示す物質の総称ですが,代表的尿毒素であり腎障害の進行促進や心血管障害の発症に関与するインドキシル硫酸やp-クレシル硫酸,さらに近年その動脈硬化促進作用が注目されているトリメチルアミン-N-オキシドはいずれも大腸内に到達した食事中の蛋白質成分を材料として腸内細菌叢の代謝を経て産生されるものです。
また,腸内細菌叢はCKD時における炎症にも寄与します。CKDでは腸管上皮のバリア機能の低下が生じ腸管透過性が亢進しているため,腸管内の細菌が血中や他臓器に移行するとされています。実際にCKD患者では明らかな感染症がなくても血中に微量のエンドトキシンや腸内細菌の構成成分が検出されることが報告されており1),この腸内細菌移行が腎障害の悪化要因でもある全身炎症の一因になるとも考えられています。
残り893文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する