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ICUにおける早期リハビリテーション

No.4893 (2018年02月03日発行) P.40

芳賀信彦 (東京大学大学院医学系研究科外科学専攻感覚・運動機能医学講座リハビリテーション医学分野)

登録日: 2018-02-05

最終更新日: 2018-01-31

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  • ICUにおける救命率が向上し,ICUにおける入院管理が生存者の身体や精神の機能に及ぼす影響に注目が集まるようになり,新しい概念が提唱されている

    ICU-acquired weakness(ICUAW)とは,ICU在室中に生じる急性のびまん性筋力低下を指し,その予防を目的に理学療法や筋電気刺激が行われている

    Post-Intensive Care Syndrome(PICS)は,ICU退室後,退院後に生じる運動・認知・精神機能の障害を指す概念であり,その予防法として,人工呼吸器装着患者に対するABCDEバンドル,ICU日記,早期離床・理学療法,認知療法などが挙がっている

    1. ICUにおける早期リハビリテーションに関する新概念

    以前はICUにおける治療の目的は救命であり,救命された患者の機能的予後は二の次であると考えられていた。しかし救命率が向上し,退院した患者が長期生存するようになると,ICUにおける入院管理が身体や精神の機能に及ぼす影響に注目が集まり,ICU在室中の早期リハビリテーションの有用性が論じられるようになってきた。

    早期リハビリテーションの有用性は,何もICUに限ったことではない。ベッド上安静を含む不動(immobility)や不活動(inactivity)が身体や精神に及ぼす多くの影響に関しては古くから研究されており,わが国では廃用症候群と称されている。不動・不活動の影響は筋骨格系のみならず,呼吸循環系,泌尿器・消化器系,代謝・内分泌系,免疫系,認知・行動系にも及ぶ(表1)1)。さらにこれらは互いに関係して悪循環を形成しており,不活動により筋活動が低下すると,筋骨格系の機能が低下し不活動を助長する。このために循環器系や他の臓器・組織の機能が低下すると,全身の脱調整状態に至り,これにより不活動がさらに進み,疾病の状態が悪化したり,能力低下が進行したりすると考えられる(図1)2)。したがってICU在室中に限らず,不動・不活動が遷延する可能性がある状況では,悪循環を回避する手段を講じる必要があり,その1つが早期リハビリテーションである。


    近年ICUにおける早期リハビリテーションと関係して,ICU-acquired weakness(ICUAW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS)の概念が提唱されている3)。本稿ではこれらの概念をふまえた上で,それぞれと早期リハビリテーションの関係について概説する。

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