中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は全脳腫瘍の約3%を占め,高齢者に高頻度にみられるのが特徴である。95%以上のPCNSLは非ホジキンリンパ腫であり,B細胞由来である。
治療方針に関しては,手術摘出率は予後因子とはならず,組織診断を目的とした生検術の適応となる。診断確定後は標準治療として大量メトトレキサート (HD-MTX)を基盤とする化学療法を先行し,引き続いて放射線治療を行う。HD-MTXに関しては,3~3.5mg/m2を2週間ごとに3~5回投与するのが一般的であり,放射線治療は全脳に30 ~40Gyの照射が推奨されている1)。このHD-MTXと全脳照射による標準治療により,生存期間中央値は33~44カ月と延長したが,遅発性中枢神経障害の発生や,治癒または長期にわたる寛解例が少ないことが治療上の問題点である。また,60歳以上の高齢者では,遅発性中枢神経障害が高頻度で起こるため,高齢者における初発時の治療として,導入化学療法により寛解となった症例に関しては,全脳照射を減量または待機とする治療法も治療ガイドラインで推奨されている。最近では治療成績の向上をめざし,HD-MTXの併用化学療法剤として,プロカルバジン(PCZ),シクロホスファミド(CPA),ビンクリスチン(VCR),大量シタラビン(HD-AraC)を用いた治療法が推奨されるが,骨髄抑制やそれに伴う感染症などの有害事象の発生率が高く,今後解決すべき課題である。
【文献】
1) 日本脳腫瘍学会, 編:脳腫瘍診療ガイドライン. 2016年版. 金原出版, 2016.
【解説】
吉本幸司*1,飯原弘二*2 *1九州大学脳神経外科准教授 *2同教授