皮膚軟部組織の動静脈奇形は,先天的な脈管の形成異常である。病変の本体は単一もしくは複数の動静脈シャント(nidus:ナイダス)で構成される。臨床症状として,幼少期は軽度の拍動や皮膚の発赤程度(静止期)であるが,成長期に増大傾向を示し(拡張期),進行すると潰瘍や出血を伴う(破壊期)。大きな病変では,さらに進行して高拍出性心不全(非代償期)を生じることもある。病変の悪化機序として,シャントに伴う末梢部の虚血と,静脈圧亢進による組織破壊が知られている。
動静脈奇形に対する治療として,手術療法と血管内治療がある。手術は時に多量の出血を伴うため,出血量軽減のために手術前72時間以内の塞栓術が推奨されている。一方,血管内治療はメスを使わずに血管内に塞栓物質や硬化剤を注入する非手術的治療である。
近年,血管造影によってシャントの構造が分類され,それぞれに対する血管内治療法が提唱されている1)。流出静脈が拡張したシャントの構造が単純なタイプでは,シャント直後の拡張静脈に金属コイルを入れて塞栓することで,病変の改善が期待できる。それ以外の病変では,頸動脈的もしくは経皮的に接着性の塞栓物質やエタノールなどを用いてシャント血管を破壊する。血管内治療単独では,破壊された皮膚軟部組織が改善することは難しいため,手術療法と血管内治療を組み合わせて治療することが望ましい。
【文献】
1) Cho SK, et al:J Endovasc Ther. 2006;13(4): 527-38.
【解説】
野村 正 神戸大学形成外科特命講師