日本循環器学会は23日、新たな心不全診療ガイドラインを公表した。これまで「急性」と「慢性」に分かれていたガイドラインが一本化された形だ。同日、その概要を九州大学循環器内科の筒井裕之氏が、同学会学術集会(3月22〜24日、大阪)で紹介した。ガイドライン本体は、同学会ホームページから無料でダウンロードできる(http://www.asas.or.jp/jhfs/pdf/topics 20180323.pdf )。
まず、心不全の定義が明確化された。加えて、一般向けの定義も書き込まれた。一般向けには「だんだん悪くなり、生命を縮める」疾患であると明記されている。また新たに、心不全を進展度合いにより、ステージA〜Dの4段階にグレーディングした。このステージ制は、2001年に米国ガイドラインが導入したものである。
注目されるのは、心不全を発症していない、心不全リスク因子を保有しているだけの段階を「ステージA」としている点。「ステージB」も心不全発症前で、虚血性心疾患や左室肥大など、左室の器質的変化を認めるのみだ。このように発症前から「心不全」とグレーディングすることによる「発症予防」への注意喚起が意図されている。それに呼応して「心不全予防」の項が新設された。
心不全が発症すると「ステージC」。治療抵抗性に至ると「ステージD」と分類され、推奨治療もステージ「C」とは異なる。「ステージD」推奨治療として目を引くのが「緩和ケア」だ。それを受け、「緩和ケア」に関する項目も新設された。
左室駆出率(EF)を基準とした「心不全の分類」も、新たに導入された。EF「40%未満」の「HFrEF」、「40−50」の「HFmrEF」、「50以上」の「HFpEF」、HFrEFからEFが改善した「HFrecEF」—の4類型である。
これに伴い、「ステージC」心不全に対する推奨治療も、「HFrEF」、「HFmrEF」、「HFpEF」別に記載された。「HFrecEF」治療に関しては記載がない。
治療に関する推奨が詳細になった一方、 心不全診断のフローチャートは簡略化された。基本的には欧州心臓病学会(ESC)の2016年版ガイドラインを参照しているが、我が国の実態を踏まえ、画像診断を重視した流れとなっている。
海外で既に臨床応用されているものの、国内では未承認の治療については「今後期待される治療」という項目を立てて紹介している。
内容だけでなく体裁も大きく変化した。図表を多用すると同時に、これまでの2色刷をカラーに改め、直観的な把握を容易にした。さらにガイドラインのポケット版を冊子とアプリケーションの2形態で発行する(有償)。
「使っていただいてこそのガイドライン。一人でも多くの先生にご活用いただきたい」と筒井氏は結んだ。