マンモグラフィは低コストで全乳房の検索が可能なモダリティであるが,特に高濃度乳房に対して病変検出能が低いことが問題である
トモシンセシスはマンモグラフィと同等の被曝量で,より優れた感度を持つマンモグラフィの亜型であるが,石灰化病変に対する検出能が低い可能性がある
造影マンモグラフィは感度・特異度ともにマンモグラフィより優れているが,造影剤の使用を必要とするので,ハイリスク者の検診に有用な可能性を検証中である
わが国における乳癌検診の主体は,マンモグラフィである。厚生労働省によって定められている「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において,40歳以上の女性は問診とマンモグラフィによる検診を2年に1回受診することが推奨されている。実施は,市町村にゆだねられているため,実施内容や対象者の年齢は市町村によって異なっている。
2009年に米国ではマンモグラフィの対象年齢が50歳以上に引き上げられ1),2012年に発表された論文では2),マンモグラフィ検診による乳癌死抑制効果に疑問が呈されている。さらに高濃度乳房問題など,マンモグラフィ検診には「逆風」が吹いているが,乳癌検診の主体はわが国だけでなく,米国においてもマンモグラフィである。それは,費用がそれほど高くないこと,わずかな線量の被曝以外は主要なデメリットがないこと,などといったマンモグラフィの特徴が,きわめて検診向きであるためであろう。また,静止画で診断が可能であり,客観性が確保される検査方法であること,術者の技量によらず全乳房の検索が可能である点などは,やはり捨ておけない利点である。
トモシンセシスと造影マンモグラフィは,両者ともに従来型のマンモグラフィの亜型とも言える新しいモダリティである。マンモグラフィに求められる利点を保持しながら,マンモグラフィが抱える欠点を克服する特性を持っている,これらのモダリティの特徴と有用性が期待できる場面を紹介していきたい(表1)。