日本人緑内障の7割以上を占める正常眼圧緑内障は,眼圧が常に正常範囲内であるためサイレントな疾患と判断してしまいがちである。しかし,長期管理した正常眼圧緑内障患者の画質の良い眼底写真を机に並べて比較してみるだけで,びっくりすることがある。陥凹が拡大している……。薬物治療の変更後に一見,眼圧のコントロールは良好であると判断し,漫然と眼圧測定と視野検査を繰り返していると,緑内障性機能変化(視野障害進行)は構造的変化より遅れることが多いため,眼底検査を軽んじることで治療を強化する時期が遅れてしまうことがある。本稿では,緑内障の長期管理のポイントについて解説する。
緑内障全般に言えることであるが,視野が徐々に狭窄する疾患であり,end stageまで矯正視力は良好なことが多いため,視力を測定しても緑内障の診断は不可能である。また,日本人の緑内障の7割以上が正常眼圧緑内障(normal tension glaucoma:NTG)であるため,眼圧を測定しても診断にはたどりつかない。むしろ,健康診断や人間ドックにて眼底写真を撮影し読影すれば,かなりの精度で緑内障の有無を診断できる。
さらに眼科では光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)や視野検査などにより,視神経の構造と機能について総合的に評価している。特にOCTは,視野障害が生じる前に緑内障による構造的変化を確認できるため,緑内障の早期発見に有用な機器となっている(図1)。
患者は緑内障と診断されればイコール失明と判断してしまうことが多いので,将来を非常に心配している患者には緑内障による失明の確率は数%以下であることを強調する場合がある。むしろ,20年後も現在と同様の視機能を保持するための治療であることを説明して治療を開始する。治療の必要性をそのように説明しておかないと,初診の際に視力障害を自覚していない症例がほとんどであるため,「なぜ自分は普段通りに見えるのに点眼をしなければならないのか」と患者本人が感じるようになり,アドヒアランスの不良により治療の継続性も保たれない。
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