新生児慢性肺疾患(CLD)の予防や治療のために,ステロイドの全身投与や吸入療法が行われてきた。1990年代は,CLDに対してデキサメタゾンの全身投与が行われていたが,2002年に米国小児科学会より生後早期のステロイド使用に関する注意喚起があり,全身投与では副作用の少ないヒドロコルチゾンが,吸入ステロイドではフルチカゾンやブデソニドなどが使用されるようになった。
これまでの報告では,生後早期(生後96時間以内)~後期(生後3週間以降)のヒドロコルチゾン全身投与はCLDの発症率を減少させるが,短期的副作用として,消化管出血,消化管穿孔,高血糖,高血圧などのリスクが上昇し,長期的な神経学的障害も懸念されている。10年のわが国におけるCLDの診療指針では予防的使用は推奨されず,rescue useに限定すべきとしている。
15年,わが国の新生児集中治療室におけるCLDに対する薬物使用の状況は,日齢28までのステロイド全身投与は約50%の施設で,吸入ステロイドは約70%の施設で行われていた1)。吸入ステロイドについては,16年にShinwellら2)がメタ解析により,修正36週の時点でのCLD発症率を減らし,明らかな短期的副作用の増加はなかったと報告した。今後,長期的副作用についての検討が待たれる。
【文献】
1) Ogawa R, et al:Pediatr Int. 2015;57(1):189-92.
2) Shinwell ES, et al:Pediatrics. 2016;138(6): e20162511.
【解説】
郷 勇人*1,細矢光亮*2 *1福島県立医科大学総合周産期母子医療センター講師 *2福島県立医科大学小児科主任教授