救急外来におけるwalk-in患者の緊急度や転帰を明らかにするため,2012年度に聖路加国際病院救急外来を受診した患者について調査した。4万3961人が受診し,walk-in患者は3万5040人で,入院率は6.7%であった。48.2%にERトリアージを施行し,低緊急が最も多かった。緊急度の高い患者ほど入院率が高く,小児科患者はそのほかの患者より有意に緊急度や入院率が低かった(P<0.05)。
聖路加国際病院は,都心部に位置する救命救急センター併設型の520床の総合病院である。救急外来では初期から三次救急までのあらゆる救急患者を,救急医を中心としたスタッフが受け入れる北米型救急診療(いわゆるER型診療)を行っている。救急外来には各勤務帯に4~6名の医師を配置しているが,年間4万人以上の患者が来院するため,時間帯によっては待ち時間が2時間を超えることもある。救急外来受診患者の緊急度・重症度はwalk-in患者,救急車での来院患者を問わず様々であるため,緊急度の高い患者を選別して早く診療する必要がある。そのため,当院では1997年から看護師によるERトリアージを開始した。
当初は独自のプロトコールを用いて患者を緊急度別に3段階に選別していたが,2011年1月からカナダで開発されたCanadian Triage and Acuity Scale(CTAS)や,それを日本向けに翻訳・導入したJapan Triage and Acuity Scale(JTAS)1) に基づいてERトリアージを行っている。
ERトリアージの結果もふまえたwalk-in患者の傾向や転帰は,これまではあまり報告されていない。そのため,walk-in患者の緊急度別の入院率や,緊急度は高いが帰宅できる疾患などを明らかにしてその対策を論じることは,walk-in患者をみる救急施設のスタッフに有用であるのはもちろんのこと,一般外来診療を行うスタッフにとっても有用である。
残り3,534文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する