わが国では,2006年に定期接種である麻疹・風疹ワクチンが1回接種から2回接種に変更された。その後,12年には不活化ポリオワクチン,13年にはHibワクチン,肺炎球菌ワクチン,ヒトパピローマウイルスワクチン,14年には水痘ワクチン,肺炎球菌ワクチン(対象は高齢者),16年にはB型肝炎ワクチンが定期接種に追加された。このように,最近10年間に多くの新たなワクチンが定期接種に追加されてきた。そのため,わが国では世代によって接種を受けたワクチンの種類や接種回数が異なり,免疫の状況が異なっている。米国などでは,わが国で実施されている定期接種ワクチンに加えて,ムンプス,A型肝炎,髄膜炎菌,ロタなどのワクチンも定期接種として行われている1)。
麻疹を例に挙げると,わが国において麻疹ワクチンを2回接種とした理由は,1次ワクチン不全(1回の接種で免疫を獲得できない)や2次ワクチン不全(年数の経過による免疫の低下)を防ぐことにある。麻疹は,08年より五類感染症の定点把握対象疾患から全数把握対象疾患に変更されたが,同年の報告数が1万1013例であったのに対し,16年の報告数は159例と激減しており,ワクチンを2回接種とした効果が明らかである2)。
最近,麻疹感染者の特徴として輸入例もみられていることから,渡航前には麻疹ワクチンの接種歴の確認も必要である。
【文献】
1) 国立感染症研究所. [https://www.niid.go.jp/niid/ja/vaccine-j.html]
2) 国立感染症研究所:麻疹とは. [https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/518-measles.html]
【解説】
大谷成人*1,島 正之*2 *1兵庫医科大学公衆衛生学講師 *2同教授