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ヌーナン症候群[私の治療]

No.5076 (2021年08月07日発行) P.41

青木洋子 (東北大学大学院医学系研究科遺伝医療学分野教授)

松原洋一 (国立成育医療研究センター研究所長)

登録日: 2021-08-10

最終更新日: 2021-08-03

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  • ヌーナン症候群(Noonan syndrome)は,細胞内のRas/MAPKシグナル伝達系に関わる遺伝子の先天的な異常によって,特異的顔貌,先天性心疾患,肥大型心筋症,低身長,胸郭の変形,停留精巣,精神発達遅滞などを示す常染色体優性遺伝性疾患である(ただし,最近同定されたLZTR1では常染色体劣性遺伝形式を示す)1)。主な原因遺伝子としてPTPN11(40.0%),SOS1(11.0%),RAF1(5.0%),RIT1(5.0%),KRAS(~2.5%),BRAF(1.8%),NRAS(0.5%)がある。これ以外の新規原因遺伝子も同定されている。

    ▶診断のポイント

    一般的な診断基準としてはvan der Burgtの診断基準が用いられてきた。この診断基準における典型的な顔貌とは,広く高い前額部,眼間開離,眼瞼下垂,内眼角贅皮と外側に向けて斜めに下がった眼瞼裂,厚い耳輪を持ち後方に傾いた低位耳介,高口蓋,小顎症,翼状頸を伴う短頸,後頭部毛髪線低位を指す。臨床的なスペクトラムが広く類縁疾患も複数存在すること,顔貌などの徴候は年齢を経て変化していくことに留意が必要である。

    ヌーナン症候群の80%以上に何らかの心臓の異常がみられる。肺動脈弁狭窄が約25~35%に,閉塞性肥大型心筋症が約20%に合併し,しばしば心房中隔欠損症も合併する。ヌーナン症候群に特徴的な心電図所見には,左前胸部誘導におけるR/S比の異常,幅広いQRS波,左軸変位,巨大Q波が挙げられる。リンパ管異形成のために胎児水腫,頸部囊腫,出生後の肺水腫,乳び胸,翼状頸などを呈する。軽度知的障害や学習障害を示すことも多い。

    ヌーナン症候群は臨床症状だけでは診断が確定できないことも多く,遺伝学的検査が有用と考えられる。鑑別を要する類縁疾患としては,Costello症候群やCFC(cardio-facio-cutaneous)症候群が挙げられる。Costello症候群は特徴的な顔貌,成長障害,相対的大頭症,カールした毛髪,新生児期の哺乳障害,心合併症,手足の緩い皮膚,アキレス腱の拘縮,小関節の可動性亢進,肘関節の運動制限,手首の尺側変位,精神遅滞,易発がん性を示し,HRASの遺伝子変異が同定される。CFC症候群では側頭部狭窄,高い額などの特徴的な顔貌のほか,低身長,骨格の異常(翼状頸,外反肘,胸郭異常など),心疾患,多彩な皮膚症状(魚鱗癬様皮膚,湿疹,母斑など)を示し,BRAF,MAPK2K1/2,KRASの遺伝子変異が同定される。SHOC2CBL変異を持つヌーナン様症候群もヌーナン症候群と臨床症状の重複を認める。黒子を持つヌーナン症候群(Noonan syndrome with multiple lentigines,以前はLEOPARD症候群と呼ばれたもの)ではPTPN11RAF1の特異的変異を持つ。

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