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発作性上室頻拍(PSVT)に対するシンプルかつ有効な電気生理学的検査(EPS)について

No.5215 (2024年04月06日発行) P.51

藤野紀之 (東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野准教授)

永嶋孝一 (日本大学医学部内科系循環器内科学分野准教授)

登録日: 2024-04-04

最終更新日: 2024-04-02

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  • 近年,発作性上室頻拍(paroxysmal supraventricular tachycardia:PSVT)に対する様々な診断方法が報告され,従来の電気生理学的検査(electrophysiology study:EPS)とは変わってきた印象を持ちます。それに対し,興味を持つ若手医師やコメディカルが増加し,以前よりも格段に確定診断に至っていると思います。また,房室結節リエントリー性頻拍や,ヒス束近傍の副伝導路へのクライオアブレーションの普及により,安全性も確実に高まりました。一方,若年者に多いPSVTに対して,覚醒下に行う長いEPSは患者にとっては苦痛であり,治療に難渋する場合はさらに時間とリスクを要します。
    PSVTに対するEPSの方法や順番について統一的な見解は示されていません。簡便かつ有効な方法や順番だけでなく,鎮静・鎮痛薬の使用の有無,時間の制限や2nd sessionを設ける症例など,若年者のPSVTに対するアブレーションについて,貴院における取り扱いをご教示下さい。
    日本大学・永嶋孝一先生にご解説をお願いします。

    【質問者】藤野紀之 東邦大学医学部内科学講座循環器内科学分野准教授


    【回答】

    【自分が刑事になったつもりで,「状況証拠」と「現行犯逮捕」を区別して考えることが重要である】

    通常は少量のミダゾラムでの軽鎮静,フェンタニルでの鎮痛下でEPSを施行します。EPSのカテーテル配置と診断の手順は,従来の方法を踏襲します。これは,先人たちが何十年もかけて磨き上げた,効果的かつ無駄のない方法だからです。

    洞調律時での心房間隔,心房-ヒス間隔,ヒス-心室間隔,QRS幅を測定の後,心室の連続刺激,心室期外刺激へと進めます。その際に心房の再早期興奮部位が右房,左房側であった場合,もしくは減衰伝導特性が弱い場合は,副伝導路の存在を疑い,傍ヒス束ペーシングを追加します。また一見,室房伝導がない症例では,室房伝導を顕在化させるために,基本刺激を心房と心室の同時刺激とし,期外刺激のみ心室刺激とします。

    続いて心房から同様に,連続刺激,期外刺激を行います。その際に,QRSが変化しないことを確認して,順行性の減衰伝導特性のある副伝導路を否定しつつ,心房-ヒス間隔の変動を評価し,房室結節の減衰伝導特性およびジャンプアップ現象を評価します。ここまでは「状況証拠集め」であり,これらの所見だけでアブレーションすることはありません。以上の過程で,頻拍が誘発されるようであれば,頻拍の鑑別診断へと移ります。誘発されないようであれば,イソプロテレノール投与下で同様のEPSを施行します。

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