成人発症Still病(adult-onset Still’s disease:AOSD)は,発熱,皮疹,関節炎を主徴として,肝障害,リンパ節腫脹,脾腫など全身臓器に炎症をきたす疾患である。10万人当たり数人程度の稀な疾患で,若年女性に多いが高齢発症も増加傾向にある。自己免疫よりも,マクロファージ活性化を主体とする自己炎症の側面が強い。
非特異的症状が多く診断が難しいが,治療前に悪性腫瘍や他の膠原病,感染症を十分に除外することが重要である。
基本的には全身性グルココルチコイド投与が必要である。全身症状が軽い場合には少量~中等量(プレドニゾロン換算20~30mg/日),全身症状が強い場合には大量(プレドニゾロン換算50~60mg/日)を初期量とするが,中等量で開始後に疾患活動性のコントロールがつかず増量を必要とすることも多いため,最初から大量が選択されることも多い。初期量を2~4週間継続後に減量を開始し,状態に合わせて1~2週ごとに5~10mg/日ずつ減量する。中等症・重症例,特にマクロファージ活性化症候群や播種性血管内凝固症候群をきたした場合には,速やかにステロイドパルス療法を実施する。
グルココルチコイドへの反応は良好なことが多いが,減量中に再燃する例も多く,またグルココルチコイドを必要最低限量とするため,免疫抑制薬や分子標的治療薬を積極的に併用する。免疫抑制薬は経験的にメトトレキサートやカルシニューリン阻害薬が用いられることが多く(いずれも保険適用外),メトトレキサート(リウマトレックスⓇ,メトトレキサートなど)は関節炎に,タクロリムスやシクロスポリンなどのカルシニューリン阻害薬(プログラフⓇ,ネオーラルⓇ)は全身症状に効果が高いとされている。分子標的治療薬としては,IL-6受容体阻害薬であるトシリズマブ(アクテムラⓇ静注)が承認されており,全身症状改善とグルココルチコイド減量効果が示されている。
治療の目標は,寛解導入時の必要十分量のグルココルチコイド投与による病勢の沈静化と,維持期の必要最低限量のグルココルチコイド投与での再燃予防である。
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