(福岡県 K)
プラスグレルとチカグレロルは,チエノピリジン系に属する抗血小板薬です。血小板凝集促進物質adenosine diphosphate(ADP)のP2Y12受容体への結合を抑制し,血小板の働きを抑える働きがあります。従来薬のうちクロピドグレルは同系統ですが,アスピリンは別系統(シクロオキシゲナーゼ阻害薬)の薬剤です。
プラスグレルは,クロピドグレルと同じプロドラッグですが,小腸や肝臓での活性代謝物の産生効率が高く,CYP2C19の遺伝子多型の影響も受けにくいため,迅速に作用し個人差が少ないという特徴があります。適応症は,冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)を行う虚血性心疾患であり,アスピリンとの併用が必須です。
チカグレロルは,P2Y12受容体を直接的かつ可逆的に阻害する薬です。プロドラッグではないので,内服後速やかに効果を発揮し,投与終了後も速やかに作用が消失します。適応症は,PCIが必要な急性冠症候群あるいは陳旧性心筋梗塞で,抗血小板薬2剤併用(dual antiplatelet therapy:DA PT)を行う必要があり,ほかにアスピリンと組み合わせる薬がない場合,と限定されています。
適応を遵守すると,これらの新規抗血小板薬が使われる場面はDAPTとして冠動脈疾患を治療する場合に限られることになります。もし,DAPTに抗凝固薬(oral anticoagulant:OAC)を加えた3剤併用療法を行うことになれば,当然,出血リスクが高まります。このため近年は,PCI後DAPT+OACの期間を短くする傾向にあります。
2017年の欧州心臓病学会ガイドライン1)には,CHA2DS2VAScスコアやHAS-BLEDスコアによる虚血と出血のリスク評価を行い,OACにワルファリンより直接阻害型OAC(direct OAC:DOAC)を選択し,DAPTは1~3カ月でクロピドグレル単剤にすると記載しています。ここではチカグレロルとプラスグレルの使用は推奨されていません。
【文献】
1) Valgimigli M, et al:Eur Heart J. 2018;39(3): 213-60.
【回答者】
平野照之 杏林大学医学部脳卒中医学教室教授