No.4798 (2016年04月09日発行) P.43
福村直毅 (和会病院リハビリテーション科リハビリセンター長/ 鶴岡協立リハビリテーション病院)
牧上久仁子 (つばさ在宅クリニック)
福村弘子 (健和会病院)
茂木紹良 (鶴岡協立リハビリテーション病院院長)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-01-26
東北地方の50床の回復期リハビリテーション病棟を対象に,摂食嚥下リハビリテーション(嚥下リハ)による院内肺炎の発症予防効果を検討した。多職種による嚥下リハ導入後の36カ間に入院した患者692名(新手法群)と,その直前の24カ月間に入院し従来手法によるリハを受けた397名(従来手法群)について,肺炎発症,肺炎による転院数を比較した。結果,従来手法群では1カ月当たり2.04例だった肺炎発症数が,新手法導入後は0.11例と激減した。新手法群は平均72.9歳と,従来手法群(同75.1歳)より若かったが,入院時functional independence measure(FIM)は平均58.2(従来手法群は同72.1)と重症であり,肺炎減少には患者の全身状態が良かったからではなく,多職種連携による嚥下リハが影響している,と考えられた。
誤嚥性肺炎は高齢者の生命予後・QOLに大きな影響を与えており,高齢化とともにその頻度が高まっている。特に脳血管障害の患者でリスクが高く,リハビリテーションの大きな障害となるが,摂食嚥下リハビリテーション(以下,嚥下リハ)や口腔ケアにより高齢の入院患者の嚥下機能を向上させる効果があることが報告されている1)~3)。しかし,嚥下リハの肺炎予防効果についての報告は限られている。筆者らは,回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期リハ病棟)で多職種連携による嚥下リハを行い,入院中の肺炎発症の減少に成功したので報告する。
東北地方の50床の回復期リハ病棟を対象にした。嚥下障害研修を受けた医師が着任したのをきっかけに,嚥下リハ・栄養療法の内容を見直した。この嚥下リハ手法の肺炎予防に対する効果を評価するため,新手法による嚥下リハを行った2004年5月~07年4月の36カ月間(新手法期間)と,新手法導入前の2002年5月~04年4月の24カ月間(従来手法期間)の入院患者の肺炎発症状況について比較した。両群の比較可能性を評価するため,入院患者の基礎疾患,重症度についても検討を行った。
残り3,994文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する