免疫チェックポイント阻害薬(ICPI)による有害事象は,それまでの殺細胞性抗癌剤のものと大きく異なる。殺細胞性抗癌剤の有害事象は主に分裂期の細胞を傷害することに起因するものが多いのに対して,ICPIは免疫賦活による自己免疫に基づくものであり,免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる。様々な臓器が自己免疫の対象となることからirAEの種類は多く,重篤な場合は死亡することもある。
現在,わが国で使用できるICPIは,抗CTLA-4抗体と抗PD-1抗体である。それぞれirAEの出方が異なり,重篤なirAEは抗CTLA-4抗体に多い。罹患臓器別で見ると,大腸炎や下垂体機能低下は抗CTLA-4抗体に多く,甲状腺機能障害は抗PD-1抗体に多くみられる。わが国では未承認であるが,両者の併用はirAEの頻度もグレードも上昇する。仮に単剤投与でも,抗PD-1抗体から抗CTLA-4抗体に変更すると併用と同等のirAEが出現することから,ICPIのスイッチ時は注意が必要である。
臓器別の対応アルゴリズムがあり,irAEの種類とグレードに従い対応する。治療の基本は休薬とステロイド投与であるが,間質性肺炎や腸炎など重篤なirAEでステロイドへの反応が不良の場合はインフリキシマブやミコフェノール酸モフェチル等の免疫抑制薬も検討する。他方で,甲状腺機能低下に関しては,甲状腺ホルモンの補充をしながらであれば,ICPIは継続投与可能であったり,irAEによってかなりその対応が異なる。
【解説】
藤澤康弘 筑波大学皮膚科講師