(大阪府 W)
14員環RXMの慢性気道炎症(上気道ならびに下気道)への有効性については,1990年代にエリスロマイシン(EM)やクラリスロマイシン(CAM)と同様に「有効」とする報告があります1)。インターネットを駆使した「現在のEM療法」としては,EMにより始め,効果不十分な場合はRXM,CAMに変更すると述べられています2)。特にRXMは耳鼻咽喉科領域で,慢性副鼻腔炎を対象とした自・他覚症状の改善効果が報告されています3)。上下気道をone-airwayと考え,RXM 150mg/日の少量で効果が確認されています。
また,15員環マクロライド〔アジスロマイシン(AZM)〕にも同様の効果があると示されています。特に欧米では類似疾患として比較に挙がる囊胞性線維症(cystic fibrosis:CF)に対するAZM治療の試験成績が報告され,抗炎症作用に関する有用性が確認されています4)5)。
一般にマクロライド薬は胃酸に弱い点が欠点ですが,RXMはEMに比べて耐酸性を向上させたマクロライド薬である点が利点に挙げられます。しかし,わが国の慢性気道炎症における厳密な無作為化盲検比較試験による検証が行われたわけではありませんので,あくまで自・他覚的所見の改善を指標とした非無作為化臨床試験結果をもって,有効性の報告がなされているのが実情です。
症例ごとに実感できる効果がある場合や効果に乏しい場合がありますが,実臨床現場では,RXMも患者個人の利益・不利益を総合的に判断して,ほぼ同等の効果を期待しうると考え,処方しているのが実情です。
【文献】
1) 門田淳一, 他:感染症誌. 1994;68(1):27-33.
2) Medical Note:現在のエリスロマイシン療法について. 2016.
[https://medicalnote.jp/contents/ 160309-026-YE]
3) 真崎正美, 他:耳鼻展望. 1994;37(2):245-53.
4) Jaffé A, et al:Lancet. 1998;351(9100):420.
5) Bell SC, et al:Chron Respir Dis. 2005;2(2):85-98.
【回答者】
吾妻安良太 日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授