No.4290 (2006年07月15日発行) P.18
登録日: 2018-08-01
最終更新日: 2018-08-01
日本ペインクリニック学会は7月19~21日に都内で学術集会を開いた。20日に開催された「非がん慢性痛に対するオピオイド使用の現状と展望」と題する講演では、薬剤師の鈴木勉氏(星薬科大薬物依存研究室特任教授・名誉教授)が登壇。米国のオピオイド・クライシスの状況を説明し、日本の催眠鎮静薬の安易な処方に注意を呼び掛けた。
近年、米国ではオピオイド濫用による死亡事例が増加しており、オピオイド・クライシスとして社会問題になっている。米国疾病予防管理センター(CDC)は、2016年の死亡者数が4万2000人に上ったと発表。昨年10月にはドナルド・トランプ米大統領が「公衆衛生上の非常事態」と宣言している。
鈴木勉氏は米国の状況について「かなり厳しい」と指摘。14年までは延びてきた平均寿命が15年、16年と短縮傾向にあることを紹介し、「オピオイドが平均寿命にまで影響を与えている」と強調した。
日本の状況については、適正な流通管理の体制が整っており、「理想的」と評価。「注意をする必要はあるが、米国のデータをそのまま日本に置き換える必要はない」との見方を示した。
その一方で、日本の催眠鎮静薬の使用量は諸外国に比べ非常に多く、薬物依存による精神科受診の大きな要因にもなっているとして問題視。「オピオイドの濫用を助長する可能性もある」と懸念を表した上で、「特にベンゾジアゼピン系薬剤が過量。眠剤の慎重な使用について考えていかなければならない」と述べた。
講演の座長を務めた同学会代表理事の細川豊史氏(丸太町病院院長)は、米国のオピオイド・クライシスはオピオイドに詳しくない医師が安易に処方してしまったことが一番の問題だと説明。日本の催眠鎮静薬の過量処方については、「どの科の医師も患者に不眠を訴えられたら、何の危機感も罪の意識もなく簡単に出してしまう。初期の段階での教育が非常に大事」と指摘した。