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■NEWS 東京医大不正入試問題、不正な得点調整を認定―内部調査委員会報告書

No.4921 (2018年08月18日発行) P.19

登録日: 2018-08-08

最終更新日: 2018-08-08

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東京医大の不正入試問題について、内部調査委員会(委員長=中井憲治弁護士)は7日、調査報告書を公表した。臼井正彦前理事長と鈴木衛前学長による佐野太文部科学省技術・学術政策局前局長への贈賄や、女子・多浪の入学制限を目的とした入試での不正な得点調整があったことを認定した。

内部調査委員会は、東京医大と顧問契約を締結している田辺総合法律事務所の弁護士で構成。中立・公正な立場で調査を実施したとしている。

文科省は昨年度、全学的な独自色を打ち出す研究に取り組む私立大学を支援する「ブランディング事業」の支援対象校に東京医大を選定。東京医大は、現在までに4000万円以上の補助金の交付を受けている。報告書によると、臼井氏は東京医大が支援対象校に選定されるよう、佐野氏から助言・指導を受けていた可能性が高く、この恩返しとして臼井氏は、東京医大を受験した佐野氏子息の得点を調整し、合格させたという。

不正な得点調整については、少なくとも2006年度入試から実施していた可能性があると指摘した。今年度の入試では1次試験で佐野氏子息を含め6人の受験者に10~49点の加点を付与。2次試験の小論文では、全員の点数(満点100点)に0.8の係数をかけ、現役から2浪までの男子に20点、3浪男子に10点を加算していた。4浪男子と女子には加算を行わなかった。

報告書は、「(出産・妊娠などにより)医師としてのアクティビティが下がる」ことを理由とした女子の受験生への不利な得点調整について「女性差別以外の何物でもない」と批判。受験回数の少ない受験生の優遇については、受験生に知らせることなく抜き打ち的に実施していたことから「受験生に対する背信行為」と厳しく指摘した。こうした調整行為は断じて許される行為ではないとして、「今すぐ全てやめるべき」と強調した。

その上で、個別の得点調整を受けた受験生の処遇、女性・3浪以上の受験生の差別について、早急に中立・公正な立場にある者による調査を行い、対応を決定すべきとした。

■「長き悪しき慣行」と強調

不正行為の原因について報告書は、臼井氏と鈴木氏の規範意識の鈍麻や東京医大のガバナンス体制の機能不全を指摘。再発防止策として、今後、理事長・学長を選ぶ際には、入試の得点調整への関与や、理事長・学長などに対して自己の親族・知人の合格を依頼した経験の有無といった「身体検査」の適正な実施が必須だと明記した。外部の人材の登用により、東京医大の「悪しき慣行」を完全に断ち切ることも期待できると提案した。

報告書は、外部理事を増員し、理事長や学長に対する理事会の監督機能を拡充する必要性にも言及。弁護士の外部理事を入れることが急務だとし、女性理事の増員についても検討を求めた。また、入試の採点方法や合否判定の方法を変更すべきとした。こうした再発防止策の策定は、外部の有識者や法律専門家、企業経営者などを含む委員会を立ち上げ、検討する必要があるとしている。

同日の会見で中井氏は、一連の問題について「長き悪しき慣行」と強調。「臼井氏と鈴木氏の個人的な指示というよりも、組織的・構造的に根深いところに原因がある」と指摘した。

中井氏(右)は、「偽りの募集要項で受験生やその家族、学校関係者のほか、社会全般を欺いた。重大な女子差別的要素も含んでいる」と厳しく批判した。

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