東京医大は7日、内部調査報告書により入学試験における不正行為が明らかになったことを受けて会見を開き、謝罪した。不正行為による不合格者に対しては追加合格を検討する考えも明らかにした。会見には行岡哲男常務理事、宮澤啓介学長職務代理が出席した。
会見の冒頭、行岡氏は、文部科学省の「ブランディング事業」の補助金を巡り前理事長と前学長に贈賄の疑いがあることや、入学試験に関する不正行為が明らかになったことを謝罪。「国民の皆様、本学を受験した受験生の皆様、すべての大学関係者の皆様、本学学生と保護者の皆様に心より深くお詫びを申し上げたい」と述べ、頭を下げた。
今後の大学の対応についてはまず、全容把握に向けて今後も調査を行う方針を説明。現在、多くの資料が東京地検に押収されており、不正行為の全容を把握するには至っていないことや、文部科学省から、過去6年分の入学試験の調査をするよう指示を受けていることから、資料の還付等を捜査当局に要請した上で第三者委員会を設置し、さらなる調査を行うとした。
得点調整による合格者への対応については、今後教授会で検討するとしながらも、行岡氏は「得点調整の行為そのものは大学側が行ったこと」として、「学生の地位を剥奪することはふさわしくない」との考えを表明。ただ、受託収賄罪で起訴された元文部科学省局長の子息に関しては、その合格が文科省事業の対価である可能性が報告書で指摘されているため、「教授会で慎重に検討する」と述べるにとどめた。
得点調整による不合格者に対して宮澤氏は「大学として誠心誠意対応し、社会の批判に十分耐えうる対応をしたい」と強調。記者から追加合格の可能性を問われ、「その可能性が高い。教授会で異論を唱える人はいないと思う」と述べ、今後文科省と協議するとした。ただ、入試に関する資料の多くが押収されていることから「早急に、不合格となった受験生を同定して対応したいが、時間がかかるかもしれない」と述べ、調査の難しさも明かした。追加合格の時期については「本来合格すべき方の合格認定がずっと遅くなって意味があるのか、ということは理解している」と話し、2018年度の不合格者に関しては来年度に間に合うよう努力する考えを示した。
このほか、内部調査報告書により明らかとなった女子の減点と、浪人生の得点調整について行岡氏は「根絶する」と明言。
入学試験の改善策については、現在、学長職務代理の下に「入試改善委員会」を立ち上げ、入試の改善策に着手していることを報告した。具体的には、現在の入試委員会には属さない主任教授クラス4名をメンバーとし、得点改ざん防止策として、監視カメラ、パソコンルームの入室制限、ファイルのアクセスログの保存と内容の監視などを検討するとした。
大学のガバナンス改善についても、外部有識者の知見をあわせて、地に足のついた再生策・組織風土改革に取り組むとの考えを強調。問題となった文科省事業の補助金は自主返還するという。
一連の問題について内部調査委員会が「悪しき慣行」と指摘したことから、会見では、不正行為が組織的に行われた可能性を問う質問が相次いだ。これに対し行岡氏、宮澤氏ともに、不正行為を認識していなかったと強調。行岡氏は「(不正行為を)聞いた時に驚愕した。大学としてダイバーシティ(人材の多様性)を推進してきたのに、それが組織に十分しみ込んでいなかったことは痛恨の極み」と釈明した。
宮澤氏は、2018年度の入学者うち、女性の割合が19.2%に留まったことに言及。17年度の割合は45.0%だったことから「今年は女性の割合が著しく低下しておかしいと思った」と述べ、その理由として当初は「数学と生物の難易度が上がったことが女性に不利に働いたと思った」と説明した。女性割合の低さが不正行為によるものだったことについて「胸がつまる思い。(不合格者に)誠実に対応したいという思いに偽りはない」と改めて陳謝した。
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