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高齢者大腸癌に対する腹腔鏡下手術

No.4921 (2018年08月18日発行) P.55

髙橋 玄 (順天堂大学下部消化管外科准教授)

坂本一博 (順天堂大学下部消化管外科教授)

登録日: 2018-08-17

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【安全に施行でき,予後も開腹手術に遜色なし】

高齢者は増加傾向にあり,2030年には人口の30%にも達すると予測されており,いわゆる2030年問題とも言われている。大腸癌も増加傾向にあるため,高齢者の大腸癌が今後増加することは明らかである。

従来は,若年者と比べ心肺機能が低下している高齢の大腸癌患者に対する手術は,手術時間・気腹・頭低位などの術中体位などを考慮する必要のない「手慣れた」開腹手術で短時間に終わらせることが主眼とされていた。しかし最近では内視鏡手術技術の向上に伴い,高齢者(≧80歳)に対しても腹腔鏡下手術を行う施設が増加している。そうした施設における高齢者大腸癌,特に結腸癌に対する開腹手術と腹腔鏡下手術のretrospectiveな比較検討1)では,腹腔鏡下手術群で手術時間は長かったが,出血量は有意に少なく,食事開始時期も早く,術後在院日数も有意に短かった。また,腹腔鏡下手術群で術後せん妄や肺炎などの合併症の発生率は,有意に低かった。全生存率や再発率などの予後についても両群間で差はなかった。

高齢者の中でも,特にperformance status(PS)が悪い大腸癌患者に対しても,腹腔鏡下手術は安全で,予後についても開腹手術と遜色ないことが示されている2)。したがって,高齢者やPSの低下した大腸癌患者に対して,腹腔鏡下手術は安全で有効な術式であり,「高齢化社会」においても許容される術式であると考えられる。

【文献】

1) Hinoi T, et al:Ann Surg Oncol. 2015;22(6): 2040-50.

2) Niitsu H, et al:J Gastroenterol. 2016;51(1): 43-54.

【解説】

髙橋 玄*1,坂本一博*2  順天堂大学下部消化管外科 *1准教授 *2教授

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