【質問者】
堀之内 徹 北海道大学大学院医学研究院精神医学教室
【BZD薬の関与が目立ち,可能な限り使用薬剤を減らせるように留意する必要がある】
高齢化社会の進行に伴い,転倒は社会における大きな課題です。時に大腿骨骨折等を契機に著しいADL低下とQOLの損失につながるのみならず,病院や施設における安全管理上の重大な問題でもあります。
転倒の要因は多数あり,内服薬はそのひとつです。降圧薬や抗アレルギー薬,ポリファーマシーもリスクですが,精神科医が多く遭遇する「転倒による骨折で入院した人がせん妄を発症する」「院内で転倒が発生し,その背景にせん妄が関わっている」などの事例では,向精神薬,特にベンゾジアゼピン系薬剤(以下,BZD薬)の関与が目立ち,時に複数種類・多量の内服例もあります。
BZD薬は催眠作用や不安に対する即効性が期待できる患者満足度の高い薬剤で,筋弛緩作用によってほどよい筋緊張の緩和に寄与します。一方,下肢筋力の脱力によって転倒に関与する危険性があるほか,依存性や耐性形成により高用量となることもめずらしくなく,前向性健忘やせん妄のリスクにもなります。こうしたことから,高齢者が入院環境で内服を継続し続ける有効性は,転倒の危険性と比較して乏しいと言わざるをえません。
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