2018年度診療報酬改定におけるロボット支援手術の適用拡大についての知見
手術用ロボット開発の動向:わが国を含め世界の企業がロボット開発に投資している
ロボット支援手術の付加価値をどのようにして高めるか,九州大学泌尿器科が開発中の手術ナビゲーションについて紹介する
ロボット支援手術の機能拡張を目的としたアプリケーション開発について考察する
2012年度以降に先進医療として実施された腎癌のロボット支援下内視鏡手術は,内視鏡手術支援機器を用いない既存の内視鏡手術と比較しても優越性が一定程度示された。2016年より7cm以下の転移を有しない小径腎癌においてロボット支援下腎部分切除術(robot-assisted partial nephrectomy:RAPN)が保険収載された。
ロボット支援下前立腺全摘除術(robot-assisted radical prostatectomy:RARP)で培われたロボット技術とはまた異なる術式が本格的に導入となり,保険収載から2年が経過した。各施設でもRAPNの初期経験について報告が散見されるまでになり,RAPNが小径腎癌の標準的な治療の選択肢のひとつとして確立されつつある。
2018年度診療報酬改定で,ロボット支援下内視鏡手術の適用が12疾患まで拡大となった。泌尿器科領域ではロボット支援下膀胱全摘除術(robot-assisted radical cystectomy:RARC)が新たに保険収載され,既存の腹腔鏡手術からロボット支援手術に移行していくことが見込まれる。今まで保険適用が拡大されなかったのは,先進医療と既存技術とを比較した場合,先進医療の優越性については科学的根拠を示すのに時間を要すること,さらに保険適用されていなかったために症例数が増えなかったことなどによる。保険適用にはロボット支援下内視鏡手術における,内視鏡の操作性の高さ,立体的な視野,術者負担の軽減およびロボット支援手術におけるラーニングカーブ到達の速さなどユーザーである医師側の利点が大きいこと,優越性を示す科学的根拠は確立していないが,既存技術と同等程度の有効性および安全性を有することが考慮された。先に保険適用となった疾患と比較して,上記の経緯から現状として保険点数は既存技術と同等となった。