【質問者】
和田 淳 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 腎・免疫・内分泌代謝内科学教授
【がんによる腎障害は非常に多彩であるが,最近注目されているのは,抗癌剤による腎障害であり休薬や中止などで対処するが,再投与については統一された見解はない】
がんによる腎障害は非常に多彩です。腫瘍の直接浸潤だけでなく,固形がんによる腫瘍随伴糸球体障害,骨髄腫関連腎障害,骨盤部悪性腫瘍の浸潤による尿路閉塞,腫瘍崩壊症候群,抗悪性腫瘍薬による腎障害などが挙げられます。オンコネフロロジーとは,このようながんによる腎障害や,腎障害患者に生じたがん治療を体系的に検討するべく,2011年に米国で生まれた造語です。京都大学がんセンターでも上記目的を達成するため,オンコネフロロジーユニットを立ち上げました。まだ稼働直後ですが,診療する内容の約40%が抗癌剤に関連した腎障害に関するものでした。
今回は誌面の関係で,代表的な抗癌剤に関連した腎障害の症状と対処法について紹介させていただきます。
シスプラチンは近位尿細管障害を起こしうる代表的な薬剤です。急性尿細管壊死が一般的ですが,ファンコニ症候群となるケースも存在します。シスプラチンによる腎障害は予防が重要です。通常,生理食塩水を中心とした補液を十分(ガイドライン上は3L/日以上)行いますが,同薬剤使用中の造影剤やNSAIDsなど,他の腎毒性物質の曝露を極力避けることも重要です。
残り757文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する