【質問者】
松川宜久 名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科学講師
【11.8pg/mL未満の男性ホルモン低下傾向群を,テストステロン補充治療の対象とする】
LOH症候群は,加齢によるテストステロン値の低下と,それに伴う臨床症状からなる症候群と定義されています。テストステロン値の低下は性機能の低下だけではなく,筋力低下,内臓脂肪の増加,骨塩量の低下,心血管機能や内分泌代謝機能の低下,抑うつ,睡眠障害など,多臓器の機能障害を起こすことが知られており,高齢化社会を迎えた現在,中高年男性のQOLを低下させる一因となっています。
加齢によるテストステロン値の低下に起因する臓器機能低下をテストステロン補充により予防し,QOLの高い生活を維持できるようにすることがLOH治療の目的です。テストステロンの生理的効果は多臓器に及び,そのため,症候群を形成する各症状が発現するテストステロンの閾値が症状ごとに異なる可能性があるため,LOH症候群の診断とテストステロン補充の基準値については,依然として明らかでない点も多いです。またテストステロンの感受性に個人差が存在し,さらにLOH症候群の各症状は他の原因によっても起こりうるため,他の疾患・原因との鑑別が必要であることが診断の困難さの原因となっています。
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