【新しい知見に基づき,胸骨圧迫と人工呼吸の比率,心室細動時の除細動などが変更】
世界的に普及している心肺蘇生ガイドラインは,米国心臓協会(American Heart Association)が主導しているACLS(Advanced Cardiovascular Life Support)ガイドラインである。このガイドラインは,数多くのエビデンスに基づいて作成され,5年ごとに改訂されている。
成人心肺停止患者に対する「胸骨圧迫:人工呼吸」の比率は,2000年のガイドラインでは15:2の割合が推奨されていたが,胸骨圧迫の継続がより効果的な冠動脈圧を維持することが明らかにされ,05年以降,30:2に変更された。また,人工呼吸を行わず胸骨圧迫のみでも蘇生の効果は同等であることが示され,10年以降,hands only CRPとして提唱されている。
急性心筋梗塞などによって心室細動を生じた際は,迅速な胸骨圧迫と除細動が必須である。2000年には,持続する心室細動に対して連続3回の除細動が推奨されていたが,3回連続除細動と1回除細動の効果に差がないことが示され,05年以降,心室細動に対する治療は,「1回除細動,速やかな胸骨圧迫再開,2分後に再評価」を繰り返す治療方針へと変更された。
最近では,バイタルサインに変調をきたした入院患者に早期介入することで,院内心停止が減少することが示されている。また,心拍再開後の治療が神経学的予後に関わることが示されている。今後,心肺停止の予防と予後に関する視点からガイドラインが改訂される可能性がある。
【解説】
平田直之 札幌医科大学麻酔科講師