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腎疾患と栄養療法 [今日から使える栄養療法の質を上げるケーススタディ(5)]

No.4791 (2016年02月20日発行) P.41

監修: 若林秀隆 (横浜市立大学附属 市民総合医療センター リハビリテーション科 診療講師)

小坂鎮太郎 (練馬光が丘病院総合診療科NST QIT(Quality Improvement Team))

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 【症例】 特に既往のないADLの自立した74歳の女性,自営業
    【現病歴】 ‌生来健康で特に既往症はなく,自宅で夫と和菓子屋を営んでおり,健康診断を受けたことはない。70歳代に入って食が細くなり,体重が減少傾向であった。2年ほど前から口渇感を覚えて水をよく飲むようになり,1年ほど前から下腿浮腫を認めていたが,加齢に伴うものだと考えて本人も家族も気にしていなかった。階段昇降など労作時の息切れを認めるようになった。体重は2年前に52kgであったのが,来院時は40kgであった。食事は気づかっておらず,甘いものが好きで残った商品をよく食べていた。数年前と比べて歩く速度が遅くなっており,50mを数分かけて歩くようになったが,足腰に痛みの自覚はなかった。転倒歴はなく,肺炎球菌ワクチンは未接種。今回は浮腫,頻尿,易疲労感で外来を受診した。
    【既往歴】 なし
    【内服薬】 なし
    【アレルギー】 なし
    【家族歴】 母が糖尿病
    【社会歴】 ‌和菓子屋を夫と息子と営んでいる。外出は買い物に行く程度,夫と息子夫婦と孫の5人暮らしで,家事は息子の妻とともに行っている。喫煙歴なし,飲酒は機会飲酒,ADL/IADLは自立,居住環境:3階建て木造1軒屋,介護保険申請なし
    【身体所見】 ‌身長152cm,体重40kg,BMI 17,血圧138/84mmHg,脈拍74bpm・整,呼吸回数16回/分,SpO2 98%(室内気),体温35.4℃
    ‌頭頸部:眼瞼結膜は桃白色,眼球結膜は黄染なし,頸静脈怒張なし 胸部:呼吸音に左右差なし,cracklesなし 腹部:軽度の膨隆・軟,腸蠕動音は軽度低下,肝脾腫を認めない 血管:心音は整,S1・2亢進なし,S3(−)・S4(−),心雑音は聴取しない 四肢:圧痕浮腫,下腿周囲長(calf circumference:CC)24cm 握力:右16kg,左14kg 認知機能:長谷川式認知症スケールで26/30点,老年期うつ病評価尺度(GDS15)にて2/15点,興味の減退や希死念慮は認めない
    【検査所見】 ‌白血球5300/μL,リンパ球920/μL,Hb 10.0g/dL,Plt 32×104/μL,TP 6.2g/dL,Alb 3.4g/dL,AST 32IU/L,ALT 24IU/L,T-bil 0.7mg/dL,Na 136mEq/L,K 4.5mEq/L,Cl 98mEq/L,Ca 9.1mEq/L,P 4.5mg/dL,iPTH 65pg/mL,1.25-VitD 38pg/mL,BUN 18mg/dL,Cr 1.84mg/dL(eGFR 21.4mL/分/1.73m2),CRP 0.6mg/dL,T-chol 110mg/dL,TSH 1.8μU/mL,HCO3 22mmol/L,HCV抗体陰性,HbA1c 8.8%,FBG 240mg/dL,抗GAD抗体(+) 尿検査:尿蛋白(2+),尿潜血(−),尿中ケトン体(−),尿沈渣では異常なし 腹部超音波:腎萎縮,皮質菲薄化は軽度,嚢胞なし

    今回のポイントは以下の3点である。

    ・CKD患者の早期発見と原因診断・治療を行う。
    ・腎臓病患者の低栄養を早期発見して栄養療法の原則に則りアプローチする。
    ・CKD患者の健康寿命を延ばすための診療の質を実践する。

    それでは前掲の症例について①栄養療法の必要性のスクリーニングと5つの原則に従った初期評価,②治療方針とその内容,③必要栄養量・内容とその投与方法,④今後の栄養投与とリハビリテーション計画,そのほか必要なことを,多職種の目線で考えてみたい。

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