【in vivo tissue engineeringからin situ tissue regenerationへ】
先天性心疾患の外科修復術では,欠損孔閉鎖や狭窄解除拡大でパッチ材料が多用される。既製品の材料は動物由来組織とpoly-tetrafluoroethyleneを素材としており,非伸長性に加え,遠隔期において,前者では慢性炎症と材料劣化による硬化・退縮と偽性内膜増殖が,後者では石灰化による硬化が生じる。このため,患児の成長に伴い,カテーテル治療や再手術による交換を余儀なくされる場合が少なくない。
この解決に「吸収性ポリマー足場材に細胞播種させた自己組織化材料をin vitroでつくるtissue engineering法」が登場した。しかし細胞の種と数,足場材の最適化が困難であり,加えて細胞の短命な埋植後生存から実用化には至っていない。
近年では,「細胞を使用せずに材料埋植部位で組織再生を誘導するin situ法」が進み,種々の吸収ポリマーと成形技術が試みられている1)。筆者らも,生体吸収性糸と非吸収性糸を用いた伸長可能な縦編み構造のパッチを開発して,内皮細胞とvasa vasorumを有する均一な膠原線維層と,平滑筋層からなる大動脈壁および大静脈壁再生に成功した2)。現在,治験準備を進めているところである。
【文献】
1) Wissing TB, et al:NPJ Regen Med. 2017;2:18.
2) Nemoto S, et al:Eur J Cardiothorac Surg. 2018;54(2):318-27.
【解説】
根本慎太郎 大阪医科大学外科学講座胸部外科学専門教授