喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)は,慢性の気流制限を呈し,喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)のそれぞれの特徴を併せ持つ疾患である
ACOは喘息,あるいはCOPD単独の病態と比較し増悪を起こしやすく,QOLが低下し,呼吸機能低下も速く,死亡率も高いと考えられる
COPD単独,あるいは喘息単独とは治療戦略が異なるため,的確な診断が重要である
喘息は,「気道の慢性炎症を本態とし,臨床症状として変動性を持った気道狭窄(喘鳴,呼吸困難)や咳で特徴づけられる疾患」である。一方,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)は,「タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することなどにより生じた肺疾患であり,呼吸機能検査で気流閉塞を示す疾患」である。両者の病態は異なる原因・機序で形成され,気道炎症・気流閉塞の特徴・症状などが異なるが,その一方で喘息とCOPDが同時に存在する病態が知られていた。喘息とCOPDの合併例は,喘息やCOPDの臨床試験においては除外される傾向にあったため,近年までその診断,治療,管理についてのエビデンスは十分に集積されたとは言えない。
2014年,Global Initiative for Athma(GINA)とGlobal Initiative for Chronic Obstructive Pulmonary Disease(GOLD)の合同委員会はこのような病態を“喘息とCOPDのオーバーラップ症候群”と呼び,「喘息とCOPDの特徴を併せもち,慢性の気流閉塞を示す」と定義し,asthma and COPD overlap syndrome(ACOS)と呼称した1)。その後“症候群”は原因不明で共通の病態の場合に使用される言葉であること,喘息もCOPDも単一ではなく様々な機序によって病態が形成され,臨床的特徴も多様性のある疾患であることなどから名称の“症候群”が除かれ,“喘息とCOPDのオーバーラップ(asthma and COPD overlap:ACO)”と呼称することが提唱された2)。わが国でも日本呼吸器学会から「喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)診断と治療の手引き2018」が刊行されている。表1に現時点での喘息,COPD,ACOの定義を示す3)~5)。