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■NEWS 30年ぶりの大改訂のポイントと国内適用の見通し【国際疾病分類ICD-11】

No.4940 (2018年12月29日発行) P.17

登録日: 2018-12-17

最終更新日: 2018-12-17

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世界保健機関(WHO)は6月、約30年ぶりの大改訂を施した国際疾病分類第11版(ICD-11)を公表した。20195月の世界保健総会での承認を待ち、国内導入が進められる。ICD-11公表を記念した厚生労働省主催のフォーラムがこのほど都内で開かれ、WHO担当官や改訂に関わった専門家が改訂の要諦や今後の見通しを語った。

11月30日のフォーラムで講演したWHOのロバート・ヤコブ氏(国際分類・用語及び標準化部門長)らによると、ICD-11の特徴としては、①世界各国の専門家を中心に検討が重ねられ最新知見が反映された、②死因・疾病統計に加え、臨床・研究の現場でも利用しやすい多様な病態を記述できるコード体系となった、③インターネットベースのツールになり、WHOからウェブサイトを介して分類提供などがなされる、④分類項目の説明、索引用語の追加など、疾患概念を含めた情報体系となった―といった点がある。ウェブサイトやツールについて、ヤコブ氏は「iPhoneやパソコンを使っている人ならば簡単に使いこなせる」と述べ、利便性の高さを強調した。

■免疫疾患、睡眠障害、漢方医学などが新設・独立

ICD-11は全26章と追補的な2部で構成される()。

表 ICD-11の構成(2018年6月現在)
第1章 感染症又は寄生虫症 第15章 筋骨格系又は結合組織の疾患
第2章 新生物 第16章 腎尿路生殖器系の疾患
第3章 血液又は造血器の疾患 第17章 性保健健康関連の病態
第4章 免疫系の疾患 第18章 妊娠、分娩又は産褥
第5章 内分泌、栄養又は代謝疾患 第19章 周産期に発生した病態
第6章 精神、行動又は神経発達の障害 第20章 発達異常
第7章 睡眠・覚醒障害 第21章 症状、徴候又は臨床所見、他に分類されないもの
第8章 神経系の疾患 第22章 損傷、中毒又はその他の外因の影響
第9章 視覚系の疾患 第23章 傷病又は死亡の外因
第10章 耳又は乳様突起の疾患 第24章 健康状態に影響を及ぼす要因又は保健サービスの利用
第11章 循環器系の疾患 第25章 特殊目的用コード
第12章 呼吸器系の疾患 第26章 伝統医学の病態・モジュールⅠ
第13章 消化器系の疾患 第Ⅴ章 生活機能評価に関する補助セクション
第14章 皮膚の疾患 第Ⅹ章 エクステンションコード
章名は厚生労働省の仮訳。色付きは追加された章。第26章の「モジュールⅠ」は日中韓の伝統医学(漢方医学)を指す

新設の章では、初めて伝統医学が取り入れられたことも大きなポイント。漢方医学の概念に基づく疾病や「証」をコーディングできるようになった。同じく「免疫系の疾患」(4章)には、免疫不全、臓器非特異的全身性疾患(全身性エリテマトーデス等)、自己炎症性疾患(ベーチェット病等)、好中球減少症、サルコイドーシス、胸腺の疾患などが含まれる。アレルギーも、生体における反応をよりよく理解できるとの観点からここに分類された。複数の章に分散していた不眠症、過眠症、睡眠関連呼吸障害などは、新設の「睡眠・覚醒障害」(7章)にまとめられた。「性保健健康関連の病態」(17章)には、性機能不全や性別不合(トランスジェンダー)が分類され、これらは精神障害として扱われなくなった。

新設の章以外でも変更は数多い。脳卒中は循環器系の疾患ではなく神経系の疾患として位置づけ。「内分泌、栄養又は代謝疾患」(5章)では、過栄養や低栄養に関する概念が最新知見を反映して更新された。「消化器系の疾患」(13章)では実臨床の視点から詳細化が進み、好酸球性胃炎、diversion colitis(空置腸管に生じる活動性慢性腸炎)などが追加されたほか、胃食道逆流症(GERD)など重要な消化器疾患には独自のカテゴリーが割り当てられた。

追補的な2部のうち、「生活機能評価に関する補助セクション」は健康に関連する生活機能のレベルを定量的に記述するためのもので、先進国を中心とする高齢化の進展を反映して導入された。また、「エクステンションコード」を使うことで、重症度、病因、解剖学的詳細、損傷や外因の状況、診断の状況などを記述できる。

■発効は2022年予定、厚労省「まずは邦訳」

ICD-11の発効は2022年の予定となっている。厚労省の森桂氏(政策統括官付参事官付国際分類情報管理室長)によると、国内適用の時期は世界保健総会(19年5月)での承認後1~2年となる見通しで、3万2000に上る分類名の邦訳を優先的に行い、統計法の告示改正手続きに取り掛かるという。改訂に向けた内科専門部会の共同議長を務めた三浦総一郎氏(国際医療福祉大大学院長)も、今改訂における日本の専門家の貢献の大きさを語った上で「なるべく早く和訳をまとめ、円滑な国内適用を進めたい」と意欲を示した。

ICD-11の特徴を説明するWHOのヤコブ氏

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