典型的なIgG4関連眼疾患は両側涙腺の対称性腫大を示し,しばしば両側唾液腺の腫大を伴う
涙腺の腫大に加え,外眼筋の肥厚,眼窩上または眼窩下神経の腫大,眼窩内の限局性もしくはびまん性の腫瘤形成などがみられる
視神経周囲に病変が及ぶと,視力低下や視野障害などの視機能障害の原因となる
治療は他臓器の病変と同様,副腎皮質ステロイドの内服が中心となり,状況に応じてステロイドの局所注射などが併用されることがある
IgG4関連眼疾患(IgG4-related disease:IgG4-RD)の典型例では,両側涙腺の腫大により左右ほぼ対称性に上眼瞼の腫脹がみられる(図1a)。腫脹の程度は様々で,しばしば上眼瞼の耳側皮下に硬結が触知される。これらの症状に加え,両側唾液腺の対称性腫大を伴う症例は従来からミクリッツ病(Mikulicz’s disease)と呼ばれてきたが1),その後,症例の蓄積とともにIgG4関連疾患における眼症状は涙腺の腫大のみならず,様々な部位に腫瘤,腫大,肥厚性病変を生じることが明らかとなり2),これらを総称してIgG4関連眼疾患と称するようになっていった。
眼瞼の腫脹が緩徐に進行した場合,本人はその変化に気付かず,他人から「目つきが変わった」「顔貌が変わった」などと指摘され,初めて病識を持つこともある。涙腺や眼窩内の腫瘤の形成は眼球突出を生じることがあり,相対的に睫毛内反の状態になると,角膜上皮障害の原因となる。外眼筋の肥厚は眼球運動障害による複視を,視神経周囲の病変は視力,視野障害をきたすことがある。また,稀ではあるが結膜や,涙囊・鼻涙管などの涙道に腫瘤性病変を生じ,眼球壁の構成組織である強膜に肥厚性病変を形成することがある。