2014年,EULARを中心とした作業部会で公表された治療目標(T2T)では,全身症状や臓器障害のない寛解,再燃や臓器障害の回避を現実的な治療ゴールとした
全身性エリテマトーデス(SLE)を対象とし,p40を標的とした生物学的製剤ウステキヌマブやJAK1/2を標的とした低分子化合物バリシチニブの第2b相治験結果が公表された
バリシチニブは標準的治療にもかかわらず,疾患活動性の高いSLEに対し有効性や安全性プロフィールを示すため,現在,第3相試験が進行中である
今後は,BtkやSykなどのキナーゼ阻害薬の開発が期待される
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は,妊娠可能年齢の女性に好発する全身性自己免疫疾患である。皮膚,関節,心,腎,漿膜,神経,血管など全身の多臓器を侵し,多彩な臨床症候を呈する。発症年齢は20~30歳代が多く,男女比は1:9~10で,患者数は約10万人と推定される。米国リウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)は2012年にSLE腎症(ループス腎炎)の管理・治療,また,欧州リウマチ学会(European League against Rheumatic Diseases:EULAR)は2012年にループス腎炎の管理・治療のガイドラインを発表している1)~6)。本稿では,ループス腎炎に対する生物学的製剤による新規治療の展望を概説する。