動脈硬化は血管の慢性炎症疾患である。加えて,ステロイド治療を要する疾患では,炎症・免疫異常などの病態自体が動脈硬化の進展に大きく関与している
ステロイドは,強力な抗炎症作用および免疫抑制作用により,動脈硬化進展を抑制し,心血管疾患リスクに対して予防的に働く
ただし,ステロイドは,生理的作用が過剰になると,脂質異常,耐糖能異常,高血圧,肥満などをもたらし,動脈硬化を促進するリスクを持ち合わせる
日常診療では,疾患コントロールに十分なステロイド治療を積極的に行い,病勢が落ち着いた際には可能な限り減量することが,動脈硬化・心血管疾患リスク抑制に肝要である
ステロイドは,抗炎症薬あるいは免疫抑制薬として,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)や全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)をはじめとする膠原病,血液疾患,呼吸器疾患,消化器疾患,腎疾患,皮膚疾患,アレルギーやショック病態まで,様々な疾患に使用される有用性の高い薬剤である。反面,その生理作用が過剰となると様々な有害作用が出現し,中でも脂質異常,耐糖能異常,高血圧,肥満は動脈硬化を促進し,心血管疾患リスクを高めるものと考えられてきた。
図1に44歳のSLEの冠動脈造影写真を示した1)。ループス腎炎を発症して10年経過した患者の左右の冠動脈には,著明な狭窄が認められる。膠原病などの慢性炎症・免疫異常を背景に持つ患者では,若年から動脈硬化が進展しており心血管疾患の発症頻度が高く,生命予後に関わる重要な合併症として問題となっている。
では,本当に「ステロイドは動脈硬化に悪いのか?」,動脈硬化・心血管疾患に及ぼすステロイドの影響について,膠原病を対象とした報告を中心に概説する。