発起人の1人として2001年に「子どもの早起きをすすめる会」を立ち上げるなど、睡眠の重要性の啓発に携わってきた。現在も乳児から高齢者まで睡眠の問題に広く向き合う。「僕の仕事の中心は健康教育や疾患予防で、患者の行動変容を促すことが第一。保健師や保育士に近いかもしれません」
小児科入局と同時に睡眠の問題に関わり始めたが、啓発に乗り出したきっかけは「怒り」だった。
大学に勤務していた頃、夜9時でも街には進学塾の生徒が溢れ、駅ではくたくたになった子どもをバギーに乗せた親子連れとすれ違う。大人の都合で子どもが十分な睡眠をとれない光景を日々目の当たりにし、怒りが醸成されていった。
怒りを原動力にして「早寝早起き」の啓発講演に全国を飛び回った。ただ、「早起き」が学力向上と結びつけて殊更強調され、遅寝早起きを推奨するような風潮が生まれるなど、メッセージが正確に伝わらないと感じるように。現在は、生物に不可欠な睡眠・食事・排泄・運動の「心地よさ」(四快)に着目し、四快の充実を通じた生活習慣の改善を訴える。「現代では睡眠も運動も、堅苦しい義務のように捉えられがちだからこそ、『生体の声』に耳を傾けることが大事なのだと思います」
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