(高知県 F)
【安定して1日量に比例した尿蛋白量を推定することができる】
腎臓病,膀胱腫瘍や血液疾患など,様々な疾患で蛋白尿が認められ,また,正常な人でも蛋白尿を指摘されることがあります。よって,試験紙法による検尿で蛋白尿を認めた場合には,病気に伴った蛋白尿か,病気が原因でない生理的蛋白尿かを見きわめることが必要になります。
1日尿蛋白排泄量は150mgが上限とされ,そのうち30mgがアルブミン,残りは低分子蛋白や尿細管由来蛋白が占めています。外来の患者では,1日蓄尿検査は容易ではありません。そこで,単位時間当たりの排泄量が安定している尿クレアチニン濃度を用いることで,尿の量あるいは濃度の影響を補正することにより,1日量に比例した尿蛋白量を推定することができます。
随時尿で尿蛋白濃度,もしくは尿アルブミン濃度と尿クレアチニン濃度を測定して比を計算し,成人の1日クレアチニン排泄量を1gとすることで推定1日量を計算します。尿蛋白/クレアチニン比(g/gCr)0.15未満,尿アルブミン/クレアチニン比(mg/gCr)30未満が正常です。
病的な蛋白尿を認めた場合,腎臓以外のものか,尿細管性か糸球体性かの鑑別を行っていきます。なお,尿アルブミン定量についてですが,わが国の保険診療では「糖尿病または糖尿病性早期腎症患者であって微量アルブミン尿を疑うもの(糖尿病性腎症第1期または第2期のものに限る)」とされています。尿アルブミン濃度が測定できない場合には尿蛋白濃度を測定して評価します。
尿クレアチニン濃度で13.6mg/dLは,基準値の上限としてはきわめて低い値であり,尿蛋白濃度の上限と思われますが,いかがでしょうか。
検体検査の基準範囲は,検査室ごとに異なった値が採用されています。その理由として,①誰を健常者(基準個体)として選別するか,明確な基準がない,②計算法(統計学的な方法論)が統一されていない,③設定作業が煩雑なため,少数例から不安定な条件で設定されている,などが挙げられています。健常者の測定結果を集計し,この平均値もしくは中央値を挾んだ健常者の95%が含まれる範囲を基準範囲として用いられたのではないかと思われます。
前述した尿蛋白/クレアチニン比や尿アルブミン/クレアチニン比は疾患の診断,治療,予防の判定のために用いられる臨床判断値となります。
【参考】
▶ 原 茂子, 他:人間ドック. 2007;22(4):8-16.
▶ 日本腎臓学会, 編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018. 東京医学社, 2018.
[https://cdn.jsn.or.jp/data/CKD2018.pdf]
▶ 濵田悦子, 他:臨検. 2017;61(4):348-9.
【回答者】
志和亜華 広島市立安佐市民病院内分泌・糖尿病内科副部長