【検査結果だけでなく,詳細な行動観察と併せて総合的に判断することが必要】
子どもは,生後脳が成熟するにつれて,頸定・歩行など運動面だけでなく,言語・社会性など認知面でも著しい発達を遂げていく。このような発達の過程は,子どもの行動の聴取・観察で知ることができるが,その評価には,様々な領域の発達のマイルストーンを分野別に数値化する尺度1)が有用である。また,発達の経過が定型でない「発達障害」についても同様の評価が重要である。しかし,どのような脳内メカニズムで,そのような行動が表出しているのかは明らかでなく,脳の電位や血流を計測する脳波や近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)などの非侵襲的な方法が試みられている。
筆者らは,NIRSを用いて,注意欠如・多動性障害の児では,絵の記憶時に定型発達児とは異なる記憶戦略を選択していること,またそれが薬物治療により一部回復することを明らかにした2)。このような結果は病態を理解するのに大いに役立つが,児の生理的状態(覚醒度など)に左右されうること,かつ個人差が大きいことから「正常範囲」を決定するのは困難である。そのため「発達障害」の診断には,検査結果だけでなく詳細な行動観察と併せて総合的に判断することが必要である。
【文献】
1) 遠城寺宗徳:遠城寺式乳幼児分析的発達検査法─九州大学小児科改訂新装版. 慶應義塾大学出版会, 2009.
2) Sanefuji M, et al:Psychiatry Res. 2014;223(1): 37-42.
【解説】
實藤雅文*1,石崎義人*2,酒井康成*3 *1九州大学環境発達医学研究センター特任准教授 *2九州大学小児科講師 *3九州大学小児科准教授