日本医療機能評価機構は15日、上部消化管内視鏡検査において病理診断報告書の確認を忘れたことにより、治療が遅れた事例が多数報告されているとして、医療関係者に注意喚起した。同機構は再発防止に向け、病理診断報告書の確認と患者などへの説明の手順を決めて実施するように呼び掛けている。
同機構の集計によると、病理診断報告書の確認忘れによって治療が遅れるなどした事例は、2012年9月から19年3月の間に35件報告されている。そのうち26件が上部消化管内視鏡の生検組織診断の事例だった。
事例が起こった主な背景としては、▶病理診断報告書の確認や患者への説明を行う者を取り決めていなかった、▶病理診断報告書が作成されたことを内視鏡検査担当医にのみ通知し主治医には通知していなかった、▶入院中に作成されなかった病理診断報告書の確認について外来の主治医に申し送りしていなかった―などが挙げられている。
事例が発生した施設の1つでは、喉頭癌の患者に重複癌の検査目的で上部消化管内視鏡検査を施行し、生検を行ったが、検査を依頼した主治医には通知されず、病理診断報告書の確認が行われなかった。4年後、患者から物が飲み込みにくいとの訴えがあり、上部消化管内視鏡検査を施行し、検査結果を確認した際、4年前の病理診断報告書に「食道癌」と記載されていることが発覚した。
同機構では、病理診断書の確認忘れについて、12年10月にも注意を呼び掛けている。なお、08年1月から12年8月の間には8件の事例が報告されている。