日本老年医学会は6日、医療・介護従事者がアドバンス・ケア・プランニング(ACP)を行う上での倫理指針として用いることを想定した「ACPの推進に関する提言」を発行した。英語圏でも解釈に幅のあるACPを「将来の医療・ケアについて、本人を人として尊重した意思決定の実現を支援するプロセス」と定義。医療・ケアチームの役割に関しては、本人・家族等との対話を通じて「本人の価値観・意向・人生の目標などを共有し、理解した上で、意思決定のために協働することが求められる」としている。
提言では、ACPの主体は「医療・ケアを受けるすべての人」としつつ、長寿社会の日本では主体の多くは高齢者であると指摘。高齢者は、がんであるか否かを問わず、通院先あるいは入院中の医療機関でACPを開始すべきとし、医療を受けていなくても要介護認定を受ける頃までには「開始することが望ましい」とした。施設入所者については「直ちに開始すべき」とし、既に意思表示が困難となっている状態でも「開始を考慮すべき」とした。
ACPにおける本人・家族との対話は、意思の変化を予測した上で複数回実施を基本としつつ、あくまで回数ではなく“質”を問題にすべきとしている。また、「ACPは『行う』ものであり、『取る』ものではなく、『書く』ものでもない」と強調する一方で、対話の内容を記録することは医療・ケアチームのカンファレンスや療養場所が変わった場合の引継ぎの際に重要であるとしている。