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大動脈弁閉鎖不全症[私の治療]

No.4967 (2019年07月06日発行) P.41

古川 裕 (神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科部長)

登録日: 2019-07-09

最終更新日: 2019-07-03

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  • 大動脈弁閉鎖不全症では,代償性の左室拡大と左室の遠心性肥大により心拍出量が維持されるが,過度の左室容量負荷のため,これら代償機転が破綻すると左室駆出率の低下に至る。重症例では肺うっ血による労作時呼吸困難などの左心不全症状を示すほか,心筋肥大と拡張期大動脈圧の降下により冠血流が悪化して生じる狭心痛,脳循環の悪化による失神などの症状も現れることがある。原因は,加齢による変性,二尖弁,リウマチ熱などであるが,わが国ではリウマチ性弁膜症は減少している。特殊な病因として,マルファン症候群,感染性心内膜炎による弁破壊,急性大動脈解離なども挙げられる。

    ▶診断のポイント

    疑う上で重要なのは聴診所見である。大動脈弁閉鎖不全症の場合,逆流性の拡張早期雑音が聴取されたら,ほとんどの場合中等症以上である。また,1回拍出量が増加するため,収縮期駆出性雑音も聴取され,拡張期雑音と合わせて往復雑音(to and fro murmur)と呼ばれている。逆流ジェットが僧帽弁前尖方向へ向かう場合には,僧帽弁の開放制限が生じ,機能的な僧帽弁狭窄をきたしてAustin Flint雑音を聴取することがある。大動脈弁閉鎖不全症の身体所見として,de Musset徴候,Quincke徴候,Hill徴候など,多くの末梢徴候が知られており,重症の大動脈弁閉鎖不全症で観察される。

    他の弁膜症同様,経胸壁心エコーが診断の確定,重症度評価,治療の適否の判断に決定的な役割を果たす。また,大動脈弁と大動脈基部の性状をより正確に評価し,手術術式を決定するために,経食道心エコーも有用である。

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