急性に発症する糸球体腎炎の総称である。WHO臨床分類における急性腎炎症候群〔急激に発症する血尿,蛋白尿,高血圧,糸球体濾過率低下,ナトリウムと水の貯留をきたす症候群〕の主要な疾患であり,A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染に伴うものが小児では8~9割を占める。一方,成人では1/3が65歳以上と,糖尿病などの免疫力低下状態にある患者で,起因菌は溶連菌とともにブドウ球菌が1/4を占める1)など,小児とは異なる特徴を有する。近年,溶連菌感染症に伴う糸球体腎炎の頻度は減ってきており,溶連菌以外の感染関連糸球体腎炎として,黄色ブドウ球菌やEBウイルス,パルボウイルスB19,マイコプラズマなど多くの病原体が報告されている1)。
本稿では,溶連菌感染後急性糸球体腎炎について記載する。
溶連菌による咽頭炎から1~2週間(皮膚感染症では3~6週間)後に,肉眼的血尿や乏尿,眼瞼の浮腫,高血圧に伴う頭痛などの腎炎症状が生じる。感冒と同時に生じる肉眼的血尿は慢性糸球体腎炎(IgA腎症,アルポート症候群など)の急性腎炎様症状である。急性期には一過性低補体血症を認めるが,8週間以内に補体価は正常化する。正常化しない場合には,膜性増殖性糸球体腎炎やループス腎炎など,低補体血症を伴う他の慢性糸球体腎炎の診断のため,腎生検が必要である。
軽症例では外来で管理可能だが,痙攣などの高血圧緊急症や透析を要する腎機能障害を合併するため,評価が大切である。
溶連菌感染後急性糸球体腎炎に対する特殊治療はなく,厳密な体液量管理を中心とした支持療法が治療の基本である。電解質異常・腎機能を評価し,過剰な体液を適正化し,高血圧を管理することが主体になる。体液量の状態を推定するために,病前との体重変化,血圧・脈圧,胸部X線による心胸郭比,下大静脈の径と呼吸性変動の有無,ヒト心房性利尿ペプチド(ハンプ®)などの指標を用いる。体液量過多による高血圧(時に臓器障害を伴う高血圧緊急症)や肺水腫などを合併するため,利尿薬を積極的に用いる。利尿薬と降圧薬でコントロールできない場合には,透析療法が必要になる。乏尿期で体液量が多いときには塩分を制限した食事にし,水分摂取量は前日の尿量を参考に決める。高血圧を伴っている間は安静が必要である。利尿期になれば,徐々に制限を緩める。培養で溶連菌が証明された症例にはペニシリン系抗菌薬を投与する。
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