陰茎には通常の皮膚と同じように様々な腫瘍ができる。良性腫瘍の代表は尖圭コンジローマだが,良性腫瘍の中にも前がん病変として注意が必要なものがあり,生検をして確定診断を得ることが重要である。陰茎癌ではヒトパピローマウイルス(human papilloma virus:HPV)感染が高頻度にみられ,HPV感染は陰茎癌の最も強いリスクファクターである。尖圭コンジローマもHPV感染が原因だが,陰茎癌とはサブタイプが異なる。陰茎癌の発生率は,喫煙者で3倍,包茎があると10倍以上高くなる。
陰茎癌はまず外観上の異常として認識されるため,生検をすればすぐに診断がつく。初診時の外観は,カリフラワー状に外方に発育するものや結節を形成するものが約半数で,残りは湿疹様の発赤や潰瘍形成,炎症性変化など腫瘤を形成しないので注意が必要である。発生部位は亀頭が最も多く48%,包皮に限局しているのが21%,両者が9%,冠状溝が6%で陰茎体部に発生するのは2%以下である。陰茎癌はリンパ行性転移をきたしやすく,初診時に鼠径部リンパ節腫大を約60%に認める。しかし,実際にリンパ節転移であるものはこの半分であり,残りは炎症性腫大であるため,リンパ節の評価が重要となる。
まず生検をしてステージを決定する。陰茎海綿体にがんが及んでいなければT1であるが,脈管侵襲がなくgrade 2までであればT1a(stage Ⅰ),脈管侵襲があるかgrade 3であればT1b(stage Ⅱ)になる。stage Ⅰまでは陰茎温存療法が可能であり,stage Ⅱからは陰茎切断術が基本になる。進行がんや転移がんではまず化学療法を施行し,効果が認められれば,手術を含めた集学的治療を検討する。
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