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持続勃起症[私の治療]

No.4974 (2019年08月24日発行) P.49

中島耕一 (東邦大学医学部泌尿器科学講座教授)

登録日: 2019-08-22

最終更新日: 2019-08-20

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  • 持続勃起症は,性的刺激・性的興奮と無関係である勃起が4時間を超えて持続している状態と定義されている。緊急処置の必要な虚血性持続勃起症(low-flow priapism)と緊急処置を要しない非虚血性持続勃起症(high-flow priapism),および虚血性に準じた対応が必要なstutteringの3タイプに分類される。

    ▶診断のポイント

    虚血性と非虚血性の鑑別が重要である。虚血性は薬剤(主に抗うつ薬,向精神薬,PGE1陰茎海綿体注射)に関連することが多い。また,完全な勃起状態で有痛性である。白血病や悪性腫瘍も検索する。非虚血性は先行する会陰部外傷が関連していることが多い。勃起は不完全で疼痛を有することは少ない。stutteringは有痛性だが間欠性であることが特徴で,鎌状赤血球症に随伴することが多い。つまり,問診が鑑別に重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    問診と視診から虚血性と非虚血性の鑑別は可能とも言えるが,陰茎海綿体血液のガス分析は必要である。暗赤色でpH<7.25,pO2<30mmHg,pCO2>60mmHgの静脈血を示唆する結果であれば虚血性と診断できる。一方,鮮紅色でpH>7.25,pO2>50mmHg,pCO2<60mmHgの動脈血を示唆する結果であれば非虚血性と診断する。

    虚血性は陰茎海綿体からの流出路が閉塞して海綿体コンパートメントが上昇している状態である。当初は動脈血も流入しているが,圧の上昇とともに流入が途絶すると低酸素化が進行する。この状態が持続すると海綿体組織の線維化など不可逆的なダメージが生じる。したがって,速やかな酸素化,つまり陰茎海綿体内圧の軽減措置が必要になる。その手段としては,まず陰茎海綿体内の生理食塩水による洗浄・脱血である。その際に交感神経刺激薬の投与がありうる。これらの処置は外来で施行可能であるが,反応に乏しければ躊躇なく陰茎海綿体と尿道海綿体間でのシャント手術を検討する。手術までの判断は可及的速やかに,ということになるが,遅くとも受診後24時間以内には着手する必要がある。
    stutteringにおいては非勃起時に交感神経刺激薬を投与することで,その後の持続勃起が発生しなければよいが,繰り返し発生するようならば,やはりシャント手術を検討する。

    非虚血性は陰茎海綿体の動脈血流不全により発生すると考えられ,会陰部打撲などの外傷が先行していることが多い。このため,会陰部における動静脈シャント形成がされていることが多く,カラードプラ超音波断層法やCT-angiographyなどで血流異常の部位を確認する。勃起自体は不完全な状態であるため,ある程度酸素化は保たれており経過観察することが可能である。また,会陰部の圧迫により勃起を解消させられることが多い。自然軽快しないようなら選択的動脈塞栓術を行う。施行についてはタイムリミットをあまり考慮しなくてもよい。

    【注意】

    交感神経刺激薬の投与は,体循環に還流すると頻脈や動悸,高血圧などが発生するので適切にモニターする必要がある。また,頭痛の訴えをきたすこともある。

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