SUMMARY
要介護状態の高齢者に対する血圧測定では,着衣上からの血圧測定は不正確であり,厚手の着衣であるほど不正確となる可能性がある。裸腕での血圧測定が難しい場合でも,可能な限り薄着での血圧測定が望ましい。
KEYWORD
血圧測定条件
測定前30分はカフェイン,喫煙,運動を避け,排尿を済ませておくこと,静かな環境で最低5分間,背もたれのある椅子に座り,腕を心臓の高さに置くこと,脱衣した上腕に適切な大きさのカフを巻くことなどが推奨される。
PROFILE
筑波メディカルセンター病院,筑波大学附属病院総合診療科で研修。筑波大学大学院地域医療教育学博士課程修了。現在は診療所・大学病院で診療,教育,研究に従事。日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医・指導医
POLICY・座右の銘
今できることに集中する
プライマリ・ケア現場にはまだまだ明らかになっていないちょっとした疑問が転がっている。今回はプライマリ・ケア現場で最もよく遭遇する血圧管理に注目して,高齢者において着衣上の血圧測定が臨床的に許容されるのかを検討した研究について紹介する。
高血圧診療ガイドラインでは,5分間以上の安静座位を取り,腕を脱衣させて血圧測定することが推奨されている1)。しかし実際には,服の上から血圧測定する場面もみられる。特に高齢者では血圧測定のために脱衣をすることは難しい場合が多いと考えられる。
高齢者で,どの程度の厚さまでの着衣であれば許容される範囲に正確な血圧測定を行えるかを明らかにできれば,臨床現場や家庭での高齢者の血圧測定に役立つと考えられる。そこで,65歳以上の介護サービスを利用している高齢者を対象として,薄手のシャツから厚手のカーディガンまでの着衣の上からの血圧測定値と,裸腕での血圧測定値との差の検証を目的として研究を実施した2)。