悪性胸膜中皮腫は中皮細胞に由来する難治性悪性腫瘍であり,アスベスト曝露と密接な関係があることが知られている。組織型は上皮型,肉腫型,二相型に大別される。
職業歴,胸膜プラークなどからアスベスト曝露を確認する。十分な組織材料を用いて免疫組織染色で鑑別診断を行うことが重要である。
まず,確かな診断を行うことが重要である。悪性胸膜中皮腫は,多くの症例が胸水貯留で発症する。職業歴や胸膜プラークなどからアスベスト曝露のある胸水貯留例では,不整な胸膜肥厚や胸膜の腫瘤形成がなくても,悪性胸膜中皮腫を疑って精査を進めることがポイントである。明らかな腫瘤形成がある場合は針生検でも診断に至る症例もあるが,そうでない場合,胸腔鏡下胸膜生検を行い,十分な組織を採取する。上皮型の場合,肺癌などの胸膜播種,肉腫型の場合,胸壁由来の滑膜肉腫や骨外性骨肉腫などの肉腫との鑑別が必要で,免疫組織染色がその助けとなる。
悪性胸膜中皮腫の治療には,外科的治療と内科的治療がある。悪性胸膜中皮腫は,胸水貯留があっても手術適応となることがある。外科的治療には,胸膜外肺全摘術と胸膜剝皮切除術がある。いずれも侵襲の大きな手技であるため,手術に耐えられる症例に限られ,治療経験が豊富な施設での治療が勧められる。
内科的治療は薬物療法と症状緩和治療がある。薬物療法では,保険適用になっている薬剤が限られている。一次治療では,シスプラチンとアリムタ®(ペメトレキセド)との併用しか認められていないが,シスプラチンの投与が困難な症例ではカルボプラチンへの代替が考えられる。二次治療では,オプジーボ®(ニボルマブ)しか承認されていない。オプジーボ®(ニボルマブ)を使用する際には免疫関連有害事象に注意が必要である。
悪性胸膜中皮腫は,使用できる抗悪性腫瘍薬も限られていることから,症状緩和はきわめて重要な治療である。胸壁に進展することでがん性疼痛をきたした場合,非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)やオピオイドを適切に使用することが大切である。肋間神経などに浸潤した場合は鎮痛補助薬の併用を考慮する必要がある。腫瘍の進展に伴い胸郭の狭小化をきたし,胸部不快感や呼吸困難を訴えることがある。希少がんであることから,情報不足などにより不安が強く,適宜,メンタルケアの専門医にコンサルトすることが有効な場合もある。
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