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■NEWS 処置時の鎮静・鎮痛「ルールやガイドラインの整備が必要」―セデーション研究会

No.4981 (2019年10月12日発行) P.70

登録日: 2019-10-07

最終更新日: 2019-10-07

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日本救急医学会は1024日、都内で総会・学術集会を開催した。3日にはセデーション研究会(代表幹事=乗井達守・米ニューメキシコ大)がハンズオンセミナーとして、処置時の鎮静・鎮痛(PSA)のシミュレーションを実施する「セデーションコース」を開いた。

PSAとは「痛みや不快感を伴う手技を行うために、薬剤によって意識レベルが低下している状態」。同研究会は、ERや病棟、内視鏡室などでPSAが必要な場面は多い一方で、体系的な教育を受ける機会がほとんどなく、鎮静に絡む事故を恐れ、十分なPSAが実施されないケースも少なくないと問題視。2012年より同コースを開催しており、今回で38回目を迎えた。コースの開催予定は、研究会のホームページ(http://psa-society-japan.kenkyuukai.jp/information/)から確認できる。

コースは、米国で救急医や麻酔科医によって実施されていたものを基に研究会が日本版を作成。米国麻酔科学会の「非麻酔科医による鎮静及び鎮痛に関する診療ガイドライン」に準拠している。

3日のセミナーで登壇した乗井氏は、PSA実施に関するルールやガイドラインの整備状況について、日本ではまだ不十分だと指摘。乗井氏は、「鎮静の深度は連続しており、全身麻酔とPSAの間に明確なラインは存在しない。投与量が多すぎる場合や患者の反応が強すぎる場合、全身麻酔になってしまう」として、全身麻酔と同様のルールやガイドラインを作成する必要性を述べた。

PSAの安全性については、米国の研究によると合併症は少なく安全性が高いことを紹介。その一方、同研究会が2017年に開始した救急外来におけるPSAの全例登録システム「JPSTAR」のデータを解析したところ、「合併症は他の国より少し高めだった。患者の多くを占めるのは7090代で、他の国に比べて高齢者が多かった」と明らかにした。これを踏まえ乗井氏は、「日本独自でデータを集め、高齢者を対象とした安全なPSAの実施方法について発表していかなければならない」と課題を述べた。なお、JPSTARには全国の8施設が参加しており、現在までに約900症例が集まっているという。

■本間氏「患者・家族に事前説明と同意を」

手技前の評価・モニタリングについては、本間洋輔氏(東京ベイ浦安市川医療センター)が講演した。本間氏は患者や家族への説明のポイントとして、眼球の運動やうわごと、体動が起こるなど特殊な状況は特に「事前に説明すべき」と強調。説明後は同意を得て、カルテに記載するよう求めた。また「処置後は危険」と強調。その理由として、刺激がなくなり過鎮静となる危険が高い、拮抗薬を使用しても再び鎮静状態になる可能性があることを挙げ、バイタルサインや意識レベルなどを踏まえた退室基準を事前に決めておくよう注意を促した。

■安全なPSA実施のため過量投与を避けることが重要

下里アキヒカリ氏(健和会大手町病院)は麻酔科医の立場から薬理学について講演した。

安全にPSAを行うための薬剤の投与量について下里氏は、「標準体重以上の場合は理想体重、痩せすぎの場合は実体重を基準に設定する」と説明。合併症のほとんどは過量投与によるものだとして、「できるだけ少ない量で鎮静を実施することが安全につながる」と強調した。過量投与を避けるために、少量分割投与か持続投与を行い、追加投与する場合は薬効のピーク時間が過ぎてから実施すべきだとした。また解離性麻酔薬であるケタミンを使用する際の注意点として、悪夢や性的な夢をみる可能性などについてもインフォームドコンセントを実施することが重要だと指摘。患者と同性の医療スタッフを含め複数人で処置にあたるよう求めた。

セミナーの後半は、架空の症例を基に参加者同士によるシミュレーションやディスカッションが行われた。

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